第三十四話 夢魔の酒蒸し
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「痛っ!」
ファリンの頭に小石が投げつけられた。
振り返ると、そこには子供達がいた。
「逃げろー!」
「やーい、こっちん来んなよ! 幽霊が乗り移るから!」
「えっ…?」
ファリンは、在りし日の故郷の記憶を思い出した。
「やだわー。幽霊が見えるなんて。」
「トーデン村長も大変ね〜。子供が幽霊付きだなんて…。」
「やだ、こっち見てるあの子。呪われたらどうする?」
「村長の娘だから、きつく言えないしな…。」
ファリンを横目に見ながらヒソヒソと話し合っている大人達。
「ファリン。俺は…、ライオスのことも好きだが、君のことも…。」
「…うるさい……。」
ファリンは、耳を塞いだ。
「ファリン。いくらライオスに懐いてるからって、おまえはあいつに依存しすぎている。いい加減身をかためてみたらどうだ? いい縁談があるぞ?」
「そうよ。ファリン。ライオスは、ライオスの生き方があるのよ?」
「いや! 兄さんから離れたくないの!」
ファリンは、子供のように首を振った。
「……ファリン。」
「に、兄さ……。」
ドラゴンキメラと化し、傷ついて血まみれのライオスが現れた。
そこに来て、ファリンは、ハッとした。
なぜここに自分を迫害してきた子供達や大人がいる? そして、別れたはずのシュローと、ずっと会っていない親がいるのかと、なにより、兄がその人物達と一緒にここにいるなんておかしい。
周りは、真っ白で背景も何もない。
「なにこれ…、夢?」
自分は、なぜこんな夢を見ているのかと、ファリンは一生懸命考えた。
そして、思い出した。
***
最近、マルシルは、ずいぶんと疲れているようだった。
マルシルは、精神的にも肉体的にも疲弊している。無理もない。ライオスの蘇生に黒魔術を使い、さらに生き返らせたライオスがあんなことになってしまったのだ。誰よりもダメージは大きい。
見張りはさせずに、無理矢理寝かせたはいいが、寝息はやがてすごいうなされる声に変わった。
「どうしたんだ、マルシル?」
「ただ事じゃ無いわ。」
「魔物か?」
「…夢魔だわ。」
夢魔。それは、名前の通り、睡眠中の人間に取り憑き、悪夢を見せて感情を食う魔物だ。
悪夢に囚われ続けると、やがて衰弱死してしまう。
「疲れがたまっているから、中々夢から抜け出せない。」
「前にシュローがやられた時みたいにやれよ。」
「うん。分かってる。」
前にシュローが夢魔に取り憑かれたときは、ファリンがシュローの夢に入って助け出した。
方法は、簡単。
悪夢を見ている人を枕にして、寝る。以上。
そして、
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