168部分:第十一話 企み深い昼その十
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第十一話 企み深い昼その十
そうして己を中心に置いたままだ。彼は話していくのであった。
「私の邪魔をし中傷をする」
「絶対に許せませんか」
「そうだ、誹謗中傷にはだ」
熱くなるあまりだった。彼はここで過ちに至った。
ある彼を攻撃する記事を読んでであった。彼はすぐにであった。
その記事に対して攻撃の文章を書いた。しかしそれは。
その記事を載せた新聞紙に書きしかも匿名だった。それを読んでだ。
多くのものはだ。すぐにわかってこう言った。
「これを書いたのは本人だな」
「ああ、ワーグナー本人だ」
「こんな感情的な記事を書くのはな」
「本人しかいないぞ」
「完全な擁護の文章じゃないか」
「自分で書いてどうするんだ」
多くの者がこれに呆れた。そしてだった。
ワーグナーの品性や人間性にだ。かなりの疑問を覚えたのだった。
そしてこれが火に油を注ぐ結果になってだ。事態はさらに悪化した。
王もそれを見てだ。そうしてであった。
己の傍でピアノを弾くビューローにだ。こう言うのであった。
「あの記事だが」
「あの新聞紙のですか」
「そうだ、あの記事だ」
憂いのある顔でソファーに座りながらの言葉だった。
「あの記事は駄目だった」
「あの記事は」
「誰が書いたかは知らない」
今はこう言うだけだった。
「だが。それでもだ」
「それでもですか」
「そうだ。あの記事はワーグナーを追い詰めてしまっている」
あえて誰が書いたかは話さずにだ。こうビューローに話すのだった。
「逆効果だった」
「ですがあの記事は」
ビューローも誰が書いたのかは知っている。しかしであった。
誰が書いたのかは言わずにだ。あえて真実を隠して王に話すのだった。
何時しかピアノは止まっている。そのうえで王と話すのだった。
「マイスターの為に」
「よかれと思ってしたことでもだ」
王はこのことがだ。今わかってきたのだった。
「それがかえってな」
「悪い結果をもたらす時もあるのですか」
「そうだ。今がそれなのだ」
こうビューローに話した。目を伏せさせて。
「あの記事は。最早」
「最早ですか」
「取り返しのつかないことになってしまった」
その目での言葉だった。
「全ては」
「ではマイスターは」
「いや、それでもだ」
ここでだ。王は言った。
「私は彼が必要だ」
「それではこれからも」
「この街にいてもらう」
これが王の考えだった。
「何があろうともだ」
「左様ですか」
「無論卿もだ」
ビューローに対してもだった。
「この街にいてもらう」
「有り難うございます」
「せめて。これ位はいいのではないのか」
「これ位は、ですか」
「私はワーグナーと共にいたいのだ」
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