第三十二話 シェイプシフター
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。思い出したの。私…、生ける絵画の中で、狂乱の魔術師に会った。」
「なんだって! おまえそんなこと言ってないだろ!」
「ごめん…。怖すぎて…、あとお腹がすきすぎて…、それどころじゃなかったの。」
シュ〜ンと、ファリンは、反省した。
それから、ファリンは、絵の中で起こったことをちゃんと語った。
「なるほど…。出来事の追体験。」
「確認だけど、狂乱の魔術師は、エルフだったよな? エルフって一千年も生きるもんか?」
「大昔には、そんな記録もあったようだけど、今は精々五百年が限度かな。」
「精々ね…。」
それでもとんでもない長命だ。
「ま、他人の命も自在なんだ。自分の寿命を延ばすなんざ朝飯前だろうけどよ。」
「まさか! 自分の魔術で自分を長生きさせるってのは、自分の肉を食べながら長生きできるかっての話で…。」
マルシルがペラペラと魔術と延命について語っているのを、センシは嫌そうに聞いていた。
「……ともかく、王の敵だと思って私達を襲いかかってきたんなら、対話で誤解をとけるかもしれないわ。」
ファリンの言葉に、マルシルがウンウンと頷いた。
センシとチルチャックは、心配そうに顔を見合わせた。
***
吹雪は、ますます強くなる。
やがて目を開けていることもできなくなってきた。
「みんな! はぐれないように手を繋いで!」
あまりの吹雪の中、全員で手を繋いで進んだ。
「このままじゃ…、よ、横穴がある! 入ろう!」
ファリンが手を引っ張って、全員を横穴に入れた。
横穴の中は暗くて、全員の姿が見えない。
「みんな、いる!?」
「ここだ。」
「問題なし。」
「いるよ。」
「私なら、ここ。」
「おう。」
「無事だ。」
「よかったぁ。じゃあ、マルシル。明かりをつけて。」
「ん?」
「なんか、いま…。」
おかしいことにファリンが気づかないまま、とりあえずマルシルが明かりの魔法を使った。
そして照らされた横穴は、牢獄の跡の通路だった。通路脇には鉄格子がいくつもある。
「牢獄跡…。はあ、一時はどうなるかと…。」
そう言ってファリンが振り返った時に、見たのは……。
自分と、仲間が何人もいるという実に奇妙な光景だった。
「えっ!?」
「うそ!?」
「なっ…。」
「これは…。」
増えてる!
一人あたり、四人ずつに増えていたのだ。
「幻覚魔法!?」
「違う…。これは、もしかして…。」
「なに?」
「たぶん、シェイプシフターじゃないかな?」
「しぇいぷ…?」
「知らない? 私の故郷では、たまに出てたの。」
その魔物は、霧の
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