第三十話 ドラゴンキメラ
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ことを責められて…。」
マルシルの言葉に、シュローはそう答えた。
「そりゃ、兄貴が振り向かねぇからって、その妹を口説いてちゃ怒られるって。」
チルチャックは、呆れたと言わんばかりに頭をかいた。マルシルは、言葉を失って放心していた。
ライオスは、かなり鈍い。正直、長らく同じパーティーメンバーであったチルチャック達ですら呆れるほどの社交的能力の欠けた人間だった。そんな彼が、あくまでも友人としてしか見ていないシュローから恋愛的な意味で好きだと思われてても気づかないだろう。
「あのときは、すまなかった、ファリン…。でも、俺は…まだ……。」
「やっぱり、殺しておくべきだった。」
ファリンが、杖の先をシュローの首に突きつけた。
「ファリン!」
「坊ちゃん!」
「よせ!」
武器を向けようとしたマイヅル達を、シュローが制した。
ファリンは、シュローを睨み、シュローは、そんなファリンの視線をまっすぐ受け止めた。
「ファリン…、俺は、ライオスのことも好きだが、君のことも好きなんだ…。」
「ええ。知ってるわ。この…贅沢者…。」
「ああ…。そうだ、俺はこういう奴なんだ。」
「兄さんは、殺させない。」
「だが、どうするんだ? あんな姿になってしまったら…!」
「もっと、別の方法があるはずよ。」
「どんな方法があるって言うんだ!」
「狂乱の魔術師を倒す!!」
ファリンが叫んだ。
「あの炎竜は、明らかに何かを命令されて動いていたわ。そんなことができるのは、この迷宮を作った魔術師以外にいない! なら、魔術師を倒して命令を書き換えればいい! マルシルならできるわ。だからマルシルは、渡さない!」
「ふ、ふざけるのも大概にするんだ! いいか、ファリン! 君はあまりにもアイツに依存しすぎている! どうしてそこまでアイツに…。君にとって唯一無二の兄だとしても、あまりにも…。」
次の瞬間、シュローは、ファリンにビンタされた。
「…ふざけてないわ。」
呆然とするシュローに、ファリンは言った。
「あなたに…、何が分かるの?」
ファリンは、冷たい声で言う。
「物心ついたときから……、ただ幽霊が見えるってだけで、家族以外からまともに見てもらえず、兄さん以外にこの力を褒めてもらえず、やっと見つけたこの居場所…。兄さんはずっと褒めてくれた。あなたは、一緒になって故郷に帰らないかって言ったわね。あなたは、確かに頼りにはしてくれたけど、それだけ。あなたは、兄さんにはなれない。兄さんは兄さんよ。私の気持ちは、私だけのモノ。あなたがどうこうする権利も言われもない。私がやることに、とやかく言う資格もない!!」
ファリンは、再びシュローを叩いた。
「私のことを想うのな
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