第二十二話 黒魔術
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マルシルが走ってきて、すぐに応急処置を始めた。
「ファリン! ファリン!」
「…だいじょうぶ。」
「なんて無茶するのよ…。馬鹿…。」
涙ぐむマルシル。
「いいの…。こんなの兄さんの痛みに比べたら…、どうってことない。」
「とりあえず、止血はしたから、ちょっと待っててね。二人を助けてくる。あとあなたの腕も。」
ファリンは、寝転がったまま、ボーッとした。
脳内を過ぎるのは、過去の記憶。
故郷では、幽霊が見えるからと他の子供達からは石を投げられ、大人達からはヒソヒソとされていた。
そんな自分を受け入れてくれるのは、家族だけだった。
ある日、近くの墓場で亡霊が出るようになり、その原因を自分が解決させたのだが、結局大人達からはなぜ分かるんだと不気味がられただけで褒められもしなかった。
でも兄のライオスは、すごい! ファリンには、霊術の才能があると褒めてくれた。
それが嬉しくて嬉しくて、この力を役立てるように勉強しようと親に頼んで魔法学校に行った。
手紙で兄が軍を辞めたりして、最終的に島の迷宮に行ったと聞くと、兄の役に立ちたくて無理を言ってついて行った。
切磋琢磨あったが、ダンジョンで戦う日々は、ファリンにとって、自分の力を最大限に役立てることができ、ようやく見つけた自分の居場所だと感じさせた。
隣ではいつも兄が褒めてくれる。それが嬉しかった。
兄がいなくなったら…、自分は……。
「い、いてぇえええええええええええ!!」
チルチャックの絶叫が聞こえた。
どうやらマルシルの治療魔法による、回復痛に苦しめられているらしい。
急激に回復すると、痛みが起こるのだ。
「ぐあああああ!!」
続いてセンシの絶叫が聞こえた。
そして二人を回復させた後、レッドドラゴンの口の中を探って、ファリンの左腕を探した。
そして歯の隙間に引っかかっているのを見つけた。
「マジかよ…。よくやるぜ。」
「おかげで勝ったんだから、感謝しないと。」
マルシルがファリンの左腕を持ってファリンのもとへ行った。
袖をまくり上げ、切り離された腕をくっつける。そして治療魔法を唱えると、ブクブクと血が泡立ち、やがてピクリッと左手が動いた。
「くっついた。」
「…うっ…、かゆい。」
「回復痛、回復痛。」
そして全員無事に回復した。
「よくやったな、ファリン。本当に炎竜を倒してしまうとは!」
「ううん。みんなのおかげだよ。誰か一人でも欠けてたら、勝てなかったわ。」
「一時はどうなるかと思ったけど…。」
「さすがに肝が冷えた。」
「想定が少し甘かったわ。」
「ま、勝てりゃいーんだ、勝てりゃ。ただな…、ファリン…。」
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