第十三話 ケルピーの石けん
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わし、一人でやる。」
センシは、ファリンからの申し出を断った。
そしてセンシは、一人でケルピーの解体を始めた。
そんなセンシの様子を見ていたマルシルが、声をかけた。
「ねぇ…、脂身の部分を少しもらっていい?」
「? どういう風の吹き回しだ?」
そして、センシは、背脂の部分を切り取り、マルシルに渡した。
脂身を受け取ったマルシルは、タイル部分の陸地に行き、魔方陣を書いて火を起こした。
そこに小鍋を置き、脂身から油を出す。
その間に、灰と水を別の鍋に入れて、混ぜ合わせる。
油、オリーブ油、濾過した灰汁を少しずつ加えて、木べらでかくはんする。
そして、木べらから落とした液体がアトを残すようになったら、型に入れて…、冷ます。
マルシルは、センシからミミックの殻をもらい、小鍋にできた液体を入れた。
「なんだ、これは?」
「センシが嫌がる物かもね…。」
そうして、できあがったのは、ケルピーの石けんである。
「…っても、本当に完成させるなら、月や年単位寝かせたいところあけど。これ、センシにあげる。」
マルシルは、殻に入った石けんをセンシに差し出した。
「ケルピーの脂は、髪油に重宝されてるの。服とか食器とかを洗うのにも使えるから…。」
「…今すぐ使えるのか?」
「まだまだ鹸化の途中だから、どうかな?」
「使いたい。苦労して作った物なのだろう?」
「! …分かったわ。」
そして、石けんを使うことになった。
まず頭から水を被り、濡れたセンシの髪の毛とヒゲにケルピーの石けんをつけてもみ洗いする。
しかし、泡立たない。
「やっぱ泡立たない! 石けんだか、ヒゲのせいだか分からないけど!」
「頑張れ、マルシル! おまえの技術ならできる!」
「私の技術じゃないから!」
「私も手伝う!」
マルシルとファリンの二人がかりでセンシのヒゲを洗った。
しばらく洗い続けると…、フサフサゴワゴワだったヒゲが髪の毛と共にぺたーっと伸びた。
「こ、これ…、この先ずっとこのままなのか? 戻るよな?」
チルチャックが今のセンシの姿に恐れおののいた。
「あとは! 火の前で! しっかりクシを入れつつ! 乾燥させて!!」
そして……。
そこには、明るい茶色のヒゲと髪の毛をフワフワとさせたセンシがいた。
洗って乾燥させてみて分かったことだが、センシのヒゲと髪の毛は、ほとんど一体化するほど長く、上半身を覆い尽くすほど多かった。
「…これで効かなかったら、どうしよう…。」
っと言いつつ、マルシルが水上歩行の補助魔法をセンシにかけた。
そして、センシが水面に足を乗せた。
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