第十三話 ケルピーの石けん
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作った方がまだいいと思う。」
「なんてこと言うの!」
「ひどい奴だな、おまえは!」
「魔物は危険よ。特に愛嬌のあるのは。昔兄さんもケルピーに懐かれて、背中に乗って…、うっかり水中に引き込まれそうになったわ。あのときは、私が助けたけど、危ないところだった。魔物の本心は人には分からないわ。」
「それは、そのケルピーのことをよく知らんかったからじゃろう。アンヌは、ゴーレムと同様長い付き合いだ。お前よりよほどよく知っておる。」
そう言ってセンシは、ファリンの忠告を聞かなかった。
「どうして…、みんな哺乳類には甘いのかな? 人食い植物には反対してたのに…。」
「それ、なぜだか本当に分からないのか?」
ファリンの呟きに、チルチャックがツッコミを入れた。
そしてセンシが、ケルピーの背中に乗った。
「いくぞ! アンヌ!」
そしてケルピーが水面を走り出した。
水中に向かって…。
「センシーーー!!」
マルシルとチルチャックが悲鳴をあげた。
ファリンは、素早くロープを自分の腰に巻いた。
水中では、本性を露わにしたケルピーがセンシに襲いかかっていた。
「マルシル!」
ファリンは、背負っていた剣を抜き、そしてロープをマルシルに託すと水に飛び込んだ。
水中では、ミミックのハサミの殻を盾にセンシがケルピーから身を守っていた。
ケルピーの歯がミシミシと殻を砕いていく。
そしてかみ砕かれようとしたとき、水に飛び込んだファリンがケルピーの背中に剣を突き立てた。
ケルピーが暴れる。
センシは、一瞬驚いたが、すぐに我に返り、ミミックのハサミの殻の先をケルピーの首に向けたのだった。
そして、水面に血が広がった。
***
ファリンと共に陸地に上がったセンシは、しばらく座り込んだままだった。
ちなみに、陸地の置いたあの動く鎧の剣からは、水がピューと出していた。
「危なかった…。言ったでしょ…? センシ…。魔物の本心は分からないって…。」
マルシルに助けられながら陸地に上がったファリンは、センシに言った。
水面には、首を裂かれて水に浮かぶアンヌ…、ケルピーの死体があった。
「……背中に乗るのを待っていたと? 襲うことならいつでもできただろうに……。」
「う〜ん…。成功率かな? それとも、そういう習性なのかなぁ? 魔物考えていることは分からないわ…。」
「分からん…。さっぱり分からん。」
ファリンとセンシは、そう会話した。
立ち上がったセンシは、斧を手にした。
「あんなに可愛がってたのに、食べるの!? 信じられない…。」
マルシルが声を上げた。
「手伝う?」
「いいや。
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