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ダンジョン飯で、IF 長編版
第十三話  ケルピーの石けん
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沈んで魔物の餌になったら大変だもの。えい。」
「やめろーーー!!」
 ファリンがすかさず杖でセンシの額を叩いて補助魔法をかけた。
「わかんないな。何がそんなに嫌なのか。魔法だって苦労がないわけじゃないのに。」
「…お前達は(まじな)いにたいして軽率すぎる。それこそわしには分からん。」
 そしてセンシとマルシルは、お互いにソッぷを向いた。
「まあまあ。過ぎたことは仕方ないよ。案外気に入るかもしれないよ? ほら。」
「ぬわっ!」
 ファリンに押され、センシが水の上に膝をついた。
 すると、少しだけ浮いていたが…徐々に沈んでいった。
 それを見たファリン達は大慌てでセンシを引き上げた。
「なに!? なんでこんな効き目が悪いの!?」
「あれ? かけ間違えたかな?」
「見てたもの、そんなはずないわ。げっ! 何コレ! 絶縁体!?」
 マルシルがセンシのヒゲに触って原因を突き止めた。
「うわ…、これって…色んな魔物の脂や血? すごい染みこんでる…。」
「イヤっ! 洗い流して、早く!」
 センシのヒゲの色と光沢の正体は、今まで狩ってきた魔物の脂と血だった。まあ上半身を覆うほどのヒゲなのだ。返り血は防げないだろう。
「これは、水洗いじゃ…無理だよ。」
「必要ない。」
 センシは立ち上がった。
「わしは、わしのやり方で水上を渡る。」
「えっ!?」
 ファリン達は、センシの言葉に驚いた。
「……船? 船作る気?」
「一瞬で藻屑だぞ?」
「もしかして、すごい考えがあるの? 魔物を使って船を作るとか?」
 心配するマルシルとチルチャックとは反対に、ファリンは、ワクワクしていた。
「見ておれ。」
 そう言ってミミックの殻を水面に浮かべた。
「? 何してるの?」
「シッ。」
 すると…。
 水面が波打ち、やがて美しい馬が現れた。
「ケルピー(水棲馬)!」
「危ない、下がって!」
「大丈夫じゃ。害はない。アンヌは、いつも釣りをしていると寄ってくる馬でな。」
「アンヌ…。」
「蒔いた魚の内臓や骨を目当てにな。大人しい奴だ。」
「魚なんか食べるんだ。」
「雑食の魔物なんだね。」
 センシは、ミミックの殻をケルピーにあげた、ケルピーは、殻をくわえてかみ砕いた。そんなケルピーの鼻先をヨシヨシとセンシが撫でる。
「以前からこいつで湖を渡れないか考えていた。」
「ええっ!?」
「ミミックの殻を使って、うまく誘導すればできないだろうか。」
「そ、そ、そんなの! すっっごくステキじゃない!」
「反対だわ。」
 顔を赤らめ興奮するマルシルとは反対に、ファリンは、冷静に反対の声を上げた。
「そのケルピーの内臓で浮き輪を
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