第十二話 ミミックの塩茹で
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ールの一つでミミックの足から身がほじくり出された。
「ほら、チルチャック。」
その身をチルチャックに渡した。
げっそりした顔をしたチルチャックが、ピッキングツールの一つに絡みとられたミミックの身を口に入れた。
「……すっげぇ…、うまい…。」
チルチャックは、膝を抱え、弱々しい声で言った。
「ホント美味しいね。すごい弾力。噛むほどの味が染み出てくる。」
「ミソは、背と腹の身を一緒に食べると旨そうだ。」
センシがほぐした身を、胴体にあるミソに混ぜて食べた。
「…? そうでもなかった。」
「ヤドカリ科の中腸線は、マズイって兄さんから聞いたことがあるわ。」
たっぷりあるミソだが、ヤドカリであるミミックのミソはあまり美味しくなかったようだ。
マルシルは、空腹も手伝ってほとんど抵抗なくミミックを食べていた。
「でも、どうしてミミックのこと黙ってたの?」
「……ミミックにはいい思い出がないからな。」
マルシルからの問いに、チルチャックは答えた。
「関わらず過ごせるなら、それに超したことはない。とにかく色々と判断が鈍ったな。あいつに宝虫が食われると思って焦った。」
「えっ? 違うよ。」
「はっ?」
「ミミックは、宝虫は食べないよ。むしろ宝虫がミミックを食べるんだよ。」
つまり、宝虫は、ミミックに卵を植え付けて、捕食して増え、一見すると宝箱に詰まった宝物のように見せかけて冒険者に見つけてもらって新天地を目指すのだ。
それを聞いたチルチャックは、頭を抱えた。
結局自分の心配損だったのだ。
「怖い思いして、かわいそうだったね。」
「やめろっつてんだろ!」
マルシルに頭撫でられ、チルチャックはその手を払いのけた。
「だって年齢教えてくれないんだもん。仲間に隠し事すると損するって学んだでしょ?」
「ぐ…。」
「今、何歳なの? 教えてよ。」
「……こ…。」
「こ?」
「今年で…、二十九歳……。」
それを聞いてちょっと場が静かになった。
やがてマルシルが呆れた声を漏らした。
「なーんだ、普通に子供じゃん。」
「そこまで幼かったのか、お前。」
「お前らこそ、いくつなんだよ!?」
「……チルチャック…さん?」
「やめろ!」
種族によって外見年齢と実年齢が一致しない。それがこの世界である。
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