第十一話 絵に描いた餅
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料理。
周りを見回すと、どうやら戴冠式のようだ。
デルガルが冠を被っている。
「この国と民が未来永劫栄えることを祈って……。」
そしてデルガルが大きな杯からワインを飲んだ。そして机についている他の人間達も続いて杯からワインを飲んでいった。
ファリンは、慌ててそれに倣って杯からワインを飲んだ。
「あ、…美味しい。」
ファリンは、勢いづき、料理を口にした。
空腹もあって、料理の味が舌に、腹に染み渡る気がした。
絵の中なので絵の具の味がするかと思ったが違った。本物のごちそうの味だった。
ガツガツと食べているファリンに、周りの目が集まるが、ファリンは、食べることに夢中で気づかなかった。
そしてついでにお代わりまでした。
そして満腹になった。
「はあ…。お腹いっぱい…。」
お腹をさすっていると、視線を、やっと感じた。
見ると、黒いローブ姿の褐色の肌のエルフがこちらを見ていた。
「あなたは…。」
何度か見た姿。
そう、あの褐色肌のエルフだ。
デルガルが産まれたときから、そして今、王の戴冠式の時までずっといる。
すると、褐色肌のエルフは、ファリンに片手を伸ばして首元に触れてきた。
『お前……、城の者ではないな?』
恐ろしい響きのある声が耳を突いた。
『何をしている? 王子の誕生の日や、結婚式にもいたな?』
ファリンは、慌ててロープを引っ張った。
早く、早くしないと…っと焦る気持ちがわき上がる。
『何が目的だ? 王座を狙う者か? ……このまま消し炭にしてやる。』
ファリンに触れている手から炎が発生した。
「あ…! きゃあああああああああ!」
炎がファリンを包み込もうとしたとき、ファリンは絵から引っ張り出された。
ファリンが引っ張り出された直後、絵からボッボッと火が出た。
「絵が…。」
「〜〜っ。」
ファリンは、慌てて自分の体を触った。どこも焦げてない。それを確認してホッと胸をなで下ろした。
「何があったの?」
「えっと…、えっと…。怖かった…。」
ファリンは、ポロポロと泣き出していた。
マルシル達は、驚きファリンを慰めた。
すると、ぐ〜っとファリンの腹の虫が鳴った。
「あれ? あんなに食べたのに、お腹に溜まってない!」
「やっぱり、絵に描いた餅じゃねーかよ! 時間返せ!」
結局、徒労に終わったのだった…。
しかも、ここでファリンは、空腹と恐怖のせいで大きな見落としをすることとなるのだった。
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