第九話 宝虫で作ったおやつ
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オークの野営地をあとにし、地下へ地下へと降りていく最中、全滅して倒れているパーティーを見つけた。
こういうのは珍しくないので別段驚くことはない。
「町に戻る途中だったのかしら? 気の毒に…。」
「外傷があまりないね。霊の類いに襲われたのかなぁ? ん…でも霊障もないし…。」
「餓死ではないか?」
「金銭がらみのいざこざと見たね。」
それぞれ死因について思い当たることを呟いたが、最後のチルチャックが言ったことについては、この全滅しているパーティーの体や周りになぜか金貨や宝石系などが散らばっていたからだ。
「多分すぐに死体拾いに見つかるでしょうけど、ゾンビにならないようにお祈りだけしておくね。」
「私もやる。」
マルシルとファリンが死体を廊下の隅に置き、ゾンビにならないようにする処置を施した。
その時、ファリンの背中に背負っている剣が震えた。
「?」
「どうしたの?」
「えっと…、な、なんでもない。」
剣のことを悟られてはいけないので、ファリンは慌てて取り繕った。
しかし、次のまた震えた。先ほどよりも大きく。
ファリンが剣を落ち着かせようとして触ろうとしたとき、チルチャックが落ちている金貨に触ろうとしているのを見た。
「! 待って、チルチャック!」
ファリンが叫んだ。
「えっ?」
そして、金貨が羽根を広げて舞い上がりだした。
「ひーっ!」
金貨が縦横無尽に飛びぶつかってくる。
「マルシル! 死体から離れて!」
「えっ?」
マルシルが隣にある死体を見たとき、下の首にかかっていた真珠のネックレスが動き出した。
よく見ると…それは、真珠に擬態しているムカデだった。
そして、カッと光と音が破裂した。
「ハーハー…。」
マルシルが杖を握りしめて荒い呼吸を繰り返した。
マルシルが放った失神魔法によって、すべての金貨とムカデが動きを止めて床に散乱していた。
マルシル以外の面々は、音と光で目を回していた。
「何コレ! 全部宝虫じゃない!」
「…うぅ…なるほど、宝虫にやられたんだね。この人達…。最近見ないから気づかなかったわ。」
「いや、気づいてただろ?」
「そうそう。なんで分かったの?」
「えっ…。えっと…、なんか、動いた気がして…。」
背中に背負っている剣が動いたからだとは言えない。
ふと見ると、センシが床に落ちている宝虫を拾い集めていた。
「センシ?」
声をかけるがセンシは答えず、小鍋を出して選別していた。
宝石型の宝虫、コイン型の宝虫、種類豊富な宝虫を、そうじゃないものとに分けていく。
それを見てマルシルは、いやああっと声を上げていた。
「食べられるの?」
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