第十二話 苦闘の中でその八
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「金沢は川の北にあるからのう」
「だからですか」
「金沢に城を築くにしても」
「手取川ですか」
「あの川を守りに使いますか」
「やはりな。ではとりあえずじゃ」
ここまで話をしてだ、信長は家臣達にさらに話した。
「本願寺は石山に封じ込めてじゃ」
「手に入れた二国を治め」
「一向宗との戦で乱れた国々もですな」
「治めていきますな」
「そうしていきますな」
「そうする、しかし公方様じゃが」
「はい、あの方ですが」
信行がすぐに言ってきた、都を預かる者として。
「これまで以上にです」
「おかしな動きをしておられるか」
「はい、怪しげな者達ばかり傍にいて」
「前に話した崇伝や天海といった者達か」
「そして幕臣達もです」
「うむ、主な者達はな」
明智や細川を見てだ、信長は信行に応えた。
「遠ざけてな」
「そしてです」
「妙な取り巻きばかりか」
「そして当家にです」
「日増しにか」
「敵意も募らせている様です」
「左様か、わしは公方様を立てるつもりであるが」
それでもとだ、信長は言うのだった。
「しかしな」
「それでもですな」
「勝手をされるだけでなくな」
「天下を乱す様なことをされては」
「わしも立てられぬ」
「左様ですな」
「して武田、上杉両家じゃが」
信長はこの二つの家のことも聞いた。
「どうなのじゃ」
「どうもです」
ここで言ったのは丹羽だった。
「戦の用意をしております」
「お互いに争うつもりか」
「いえ」
丹羽はその目の光を強くさせて信長に答えた。
「それがです」
「やはりそうか」
「それでは」
「うむ、今は兵を休めるが」
「何時でもですな」
「兵を出せる様にはしておこう」
兵糧や武具の用意はしておくというのだ。
「商人達から買っておけ」
「わかりました」
「さて、両家とは出来るだけ戦いたくないが」
このことは本願寺に対するのと同じだ、織田家にとってこの両家もまた非常に手強い相手であるからだ。
「そう思っていたが」
「しかしですな」
「そうもいかぬな、ではな」
信長は武田そして上杉との戦の用意もさせた、そしてここで蒲生がこう言ってきた。
「殿、我等はともかくとして」
「竹千代じゃな」
「はい、徳川殿は」
「うむ、あ奴はあれで思いきったところがあってな」
家康のことも幼い頃より付き合いがありよくわかっている、それで言うのだった。
「妙な挑発を受けるとな」
「そこで、ですか」
「攻めに出ることもあるのじゃ」
「そうなのですか」
「相撲や剣術でそうじゃった」
信長は手合わせをしていたのだ、まだ吉法師と言われていたその時に。
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