第二話 人食い植物のタルト
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リン!」
「わっ!」
「今ポケットに入れた物を出しなさい!」
「ち、地上でも栽培できるか試したいの…。兄さんのお土産にもしたいし…。」
「ダメ!」
「あー!」
ファリンから種を奪ったマルシルは、すぐにその種を燃やした。
その間にもセンシの調理は進んでいき、剥いた果実の皮をよく叩いて柔らかくしてフライパンに敷き詰めた。
それから、別の小鍋に未熟果をすりつぶして、そこにスライムと少しのサソリの水炊きの残り汁を加えて、粘りが出るまでよく混ぜ合わせる。
なめらかになった物に、残りのサソリの水炊きの残り汁を加えて、乱切りにした木の実を加え、ざっくりと混ぜ合わせる。
それを先ほど皮を敷き詰めたフライパンに入れ、しばしカマドの火で加熱。
表面がフツフツしてきたら、残りの木の実を彩りよく加え……。
そしてできあがったのは、人食い植物のタルトだった。
「た…タルト? 卵も小麦粉もないのに…。」
「見せかけだがな。」
センシは、そう答えて、包丁でタルト(?)を切り分けた。
ケーキのように切り分けられたタルトは、取り皿に取るとますます見るからにタルトっぽい見た目だった。
さらに、その横に縦切りにしたミアオークという人食い植物の果実を添える。
「皮は焦げ付き防止だ。食べずに残していい。」
そして実食。
「塩味だ。想像してた味と違った。甘くない。」
「うん。美味しい。」
人食い植物の果実は、その見た目とは裏腹に甘くなかった。
「マルシル。美味しいよ。たぶん、マルシルが好きな味だよ。」
マルシルは、渋っていた。
っというのも……。
「本当に、あの植物の実は入ってないでしょうね?」
あの植物とは、でかいウツボカズラのことだ。
「入れてない。あの植物に溜まるゼラチンを使えばもっと綺麗にまとまったんだが……、スライムだとうまく固まらないな。」
っと、センシは答えた。
スプーンで食べるタルトなのだが、スプーンを刺すとちょっとボソッと崩れるのだ。
マルシルは、渋々といった様子で一口まず食べた。
そして。
「あっ、これ、美味しい。」
「養土型は、瑞々しくて甘みがあって、消化型は詰まっていて味が濃いのね。」
「でも、それでいいのかしら? 美味しいってことは他の動物にもごちそうなんじゃないの? せっかく実を付けても食べられてしまうんじゃ…。」
「そこは肉食植物だから…、狙う動物を捕えて養分にしてるのよ。」
「あ、そうか。へー、じゃあ、この美味しさも戦略なのかな? なるほどなぁ。」
そこまで言ってマルシルは、ハッとした。
「マルシルも、興味を持ち始めてくれた…。嬉しいなぁ。」
「違う違う!」
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