第二話 人食い植物のタルト
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となんてないんだよ?」
「ごめん…。そうよね…。」
「ただ…、人食いネギをつれて化け鴨なら出るかもしれないのが迷宮なんだよ。もっと楽しもうよ。」
「そこまでポジティヴにはなれないわ……。」
ファリンなりに励ますが、マルシルは、どんどん元気をなくしていった。
すると、センシが言った。
「いや、この時期、木の実や果実なら山ほどあるぞ。」
「えっ…! ほんと?」
マルシルの顔に明るさが戻った。
センシは、グッと親指を立てた。
***
確かに、果実はあった。
しかし。その果実を守るかのように。
ワサワサと咲いた鮮やかな、大きすぎる花々。
よく見るとネバネバとした粘液を付けたツタやツル。
そして花の中心にある、歯のようなモノ。
筒の長い器。いわゆるウツボカズラのもっと大きい奴の部位の中に溜まっている溶解液からは、甘い香りを漂わせる。
「人食い植物じゃん!!」
「違うよマルシル。人食い植物って言うのは、あくまで俗称だよ。」
「でも人を食うじゃないの、あれ!」
「よく見て、例えばあの花、バラセリアっていうんだけど、あれはね、動く物に巻き付いて絞め殺して自分で堆肥を作るの。だから好んで人を襲っているわけでもないし、消化してるわけじゃないわ。」
「でも、人を養分にすることもあるんでしょ?」
「私達が普段食べている食べ物だって、元をたどれば生物の糞や死骸でできてるよ?」
「いや、その流れについてケチはつけないけどさあ…。」
「だいじょうぶ。まだ地下二階だぜ? この辺りに死体が転がってたらすぐに誰か気づく。」
チルチャックの言うとおり、この迷宮では、死体を回収して生き返らすことで生計をたてる者も多いのだ。そのため魔物が強い深層はともかく浅いところでは魔物の餌になる者は少ないのだ。
なお、その場合、持ち物の10%から20%を支払うのが義務化している。
「…あの根元にひとつ。あそこに二つ。その向こうの黄色い物は、まだ熟していない。」
「なるほど。でも、こっそり潜るのは無理だわ。」
「戦うしかないな。」
ファリンとセンシが戦うために武器を手にした。
すると、マルシルが前に出た。
「私がまとめて片付けてあげる。」
そして呪文の詠唱に入った。
呪文が完成し、魔法を放つ直前になってセンシが叫んだ。
「やめろ! 馬鹿者!!」
「は? なん…。」
魔法はかき消え、後ろを見たマルシル。
そこに人食い植物が迫った。
そしてマルシルの身体を自在に動くツルで巻き取った。
「ギャーーー!」
「木の実まで魔法で吹っ飛ばすつもりか。」
「なーーーー!?」
「食べる分だ
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