第一話 大サソリと歩きキノコの水炊き
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「十年!」
「そんな昔からあったっけ?」
「まあ、少し待っとれ、すぐできるわい。」
それからは、ドワーフの男が手際よく調理していった。
取ってきた根っこの皮を剥き、いちょう切りにして、一緒に取ってきた藻と一緒に鍋に投入した。
それから味見をして、調味料を少々加え、鍋に蓋をし、しばし煮えるまで待った。
そして。
「できたぞ。」
蓋を開けると、そこには、煮えて赤くなった大サソリの入った、大サソリと歩きキノコの水炊きが完成していた。
「大サソリは、茹でると赤くなるんだ。蟹みたい。」
「本当にサソリなのか?」
箸で鍋の具を持ち上げ、取り皿に取っていく。
「なんだか、旨そうな匂いが。」
「本で読むのと見るのは大違いだね。」
「熱を通すと身が少し縮むから、簡単に殻から身がほぐれるぞ。」
「あ、本当だ。」
ファリンがほぐれたサソリの身を食べた。
「…美味しい!」
「そうだろうそうだろう。」
「調理次第でこんなに味が変わるんですね。」
「そうだろうそうだろう。」
「マルシル。美味しいよ。」
マルシルは、遠巻きに腕組みをして立っていた。
どうしても食べたくないのだ。
だが……。
腹の虫が彼女を苦しめる。
そして…、ついに。
「私にも、一杯ちょうだい!」
取り皿に分けた鍋の具材。
その中には、春雨の太い奴か、クラゲを切った奴みたいなものが入っていた。
「何コレ?」
「スライムの内臓の干物。」
「………。」
マルシルは、かなり抵抗している顔をしていたが、やがて、取り皿の中の鍋の具をかっ込んだ。
「うわ! 美味しい!」
「スライムってこういう風に食べるんですか?」
「どうやってもいける。果汁に浸して食べても旨いぞ。」
「この木の根もホクホクしてうまいですね。」
「正確には、根ではない。上下逆さまに迷宮に咲く植物の幹だ。」
「この藻も柔らかくて美味しい。これも迷宮に咲く植物なの?」
「それは、よく湿ったところにわく、普通の藻だ。」
マルシルは、それを聞いてげんなりした顔をした。
「普段何気なくかよっている迷宮にこんなものがあるなんて。」
「ほんと、すごいよね。」
マルシルとは反対に、チルチャックとファリンは、のほほんとそんな会話をしていた。
そして、ファリン達は、存分に大サソリと歩きキノコの水炊きを堪能したのだった。
「そういえば、自己紹介がまだでした。私は、ファリン。こっちは、魔法使いのマルシルと、鍵師のチルチャック。」
「わしの名は、センシ。ドワーフ語で探求者という意味だ。」
食事の後片付けをしながら、お互いの名前を伝えた。
「なにかわけあ
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