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永遠の謎
163部分:第十一話 企み深い昼その五

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第十一話 企み深い昼その五

「私自身がな」
「ワーグナー氏の屋敷にですか」
「そちらに」
「そうだ、行こう」
 また言う王だった。
「それならば彼が帰るということもあるまい」
「そして陛下が来られれば」
「陛下御自身が来られればですね」
「ワーグナー氏も会わざるを得ない」
「だからこそですか」
「そうだ。だからこそ私が行こう」
 王は再び話す。その言葉が続く。
「それでどうか」
「いい御考えだと思います」
「それは」
 侍従達は王のその考えにまずは賛成した。しかしだった。
 彼等はそのうえでだ。怪訝な顔になってだ。こうも話すのだった。
「しかしです」
「陛下が行かれるとなるとです」
「どうしても気付かれます」
「それが問題です」
「そうだな。先程の話だが」
 王はまた暗い顔になった。そのうえでの言葉だった。
「私は誰からも見られているからな」
「はい、ですから」
「迂闊に赴かれてもです」
「よくありません」
「また噂の種になります」
 そのことが問題だった。噂に倦んでいる王にとってそれは避けなければならないものだった。王自身もそのことを最も恐れていた。
 そしてだ。王はふと閃いた。
 その閃きをだ。彼等に話したのだった。
「夜はどうか」
「夜ですか」
「その時にですか」
「そうだ、夜に行こう」
 こう話すのだった。
「夜にだ」
「それがいいかも知れませんね」
「確かに」
 侍従達もそれでいいとしたのだった。
「夜は人目が少ないですし」
「御忍びということで」
「それでいいかと」
「そうだな。ではそうしよう」 
 王はこれで決めた。
「夜にひっそりと行こう」
「夜はこの場合いいですね」
「確かに」
「何もかもを隠してくれます」
「非常にいいです」
「その通りだ。夜はいいものだ」
 王の言葉には憧憬があった。夜に対するだ。それを言葉に出していた。
 そうしてだ。今度は夜について話すのだった。
「昼は何もかもを曝け出してしまう」
「その太陽の光がですね」
「全てをですね」
「そうするのですね」
「太陽の光は眩し過ぎるのだ」
 そうしたものだというのだ。
「何もかもをな。そして」
「そして?」
「そしてといいますと」
「今度は」
「昼は誹謗や中傷で満ちている」
 こう言ってだ。そこに嫌悪を見せた。
「企みもだ」
「昼にこそあると」
「そうだというのですね」
「そうだ。人は昼に動くものだ」
 人の動くのは昼である。だとすればだった。
 何もかもが昼に行われる。王はそう考えていた。人は昼に動きそうしてそこにはあらゆる醜いものがある。王はそう考えていたのだ。

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