序章 兄さんが食べられた:ファリン談
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さい!」
「私は正気よマルシル。」
ファリンの肩を掴んでマルシルは、ガクガクと揺すったが、ファリンは揺るがない。その目には強い決意の色があった。
「……いけないこともない?」
チルチャックが今までの冒険を思い起こし、顎に手を当てて少し考え込んでいた。
「無理無理! 絶対イヤ!」
「でも、魔物を狩って食い扶持にしている人間って結構居るよ?」
「それは、地上に戻れない犯罪者とかの話でしょ! そいつらだってしょっちゅう、食中毒で搬送されてんじゃない! 新聞で見たわ! とにかく考え直して、ファリン!」
「私、兄さんを助けるためなら何でもするわ。イヤなら戻ってね、マルシル。」
「うぐ…。」
こうなったらテコでも動かないファリンに、マルシルは、閉口した。
迷宮の入り口で、ギャーギャーとそんな騒ぎをしていた彼女らを、物陰から見ている人物がいたのだが、ファリン達は気づかなかった。
その時。
奥の方から悲鳴が響いてきた。
そしてドタバタと足音が聞こえてきて、ボロボロの冒険者達が逃げてきた。
そんな彼らの後ろを追いかけてくるのは、歩くキノコ…、歩きキノコだった。
ファリン達の横を通り過ぎていく歩きキノコを、マルシルが杖で叩いて倒した。
「……今の迷宮初心者ね。この程度の魔物で総崩れなんて、向いてないんじゃ…。ん?」
心配そうに逃げていった初心者達の通った道を見ていたマルシルだったが、ふと気づいた。
先ほどマルシルが叩いて死んだ歩きキノコを、ファリンがしゃがんで持ち上げていることに。
「ファリン…?」
「これを、今日の昼食にしようよ。」
「やだーーーー!!」
マルシルが今日一番の絶叫をあげた。
やだやだとだだをこねて床を転がるマルシル。
「いきなりキノコは危なくないか?」
チルチャックが言った。
「『迷宮グルメガイド』によるとね、初心者向けの食料らしいよ。」
「はあ?」
ファリンは、歩きキノコを片手に、もう片手で懐から一冊の本を出してチルチャックに差し出した。
チルチャックと、転がるのを止めたマルシルが本を開いて見る。
たくさんの付箋が貼ってあり、そして書き込みと、何度も読み返した形跡がある年季の入った本だった。
「兄さんの愛読書。たぶんドラゴンに食べられたときに落ちたんだね。」
迷宮から脱出して、目を覚ました場所で落ちていたので拾ったのだ。
その時、カサカサという微かな音をファリンは聞き取った。
「この足音……、大サソリ!」
ファリンは、ナイフと杖を持って走って行った。
「…まさか、ファリンの奴…。」
チルチャックが不審そうに言った。
迷宮内は、かつて墓場だった。
ある小
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