162部分:第十一話 企み深い昼その四
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第十一話 企み深い昼その四
「周りは。色々と言う」
「特に陛下はそうですね」
「誰もが私を見て私について言う」
そのことにだ。わずらわしさを感じながらの言葉だった。
「それが私にとってはだ」
「お嫌ですか」
「どんなに聞こえないように、気付かれないようにしていてもだ」
その周囲がという意味である。
「聞こえるし気付くものだ」
「それが噂であり視線ですか」
「私はそれに耐えなくてはならないのか」
辛い目になっての言葉だった。
「王は」
「それは」
「それについては」
侍従達は王のその言葉に何と言っていいかわかりかねた。
それで沈黙してしまった。だが王はその間にもまた言う。
「王の務めは。噂や視線を浴びることなのか」
「それはです」
何とかといった感じでだ。侍従の一人が言ってきた。
「御気になされなければいいのです」
「気にはか」
「はい、気にしていてはきりがありません」
その通りだった。彼の言うことは正論だった。そしてその正論がさらに続く。
「耳に入る噂はその心に滲みは入り」
「蝕んでいくものだな」
「そうです。それは意識してはならないものです」
「それはわかっていてもだ」
「御気になされぬよう。そして」
「そして?」
「愛するものはです」
それについての話にもなった。愛するものについてのだ。
「一度掴まれたら二度とです」
「二度とか」
「はい、手放されないことです」
こう王に話すのだった。
「決してです」
「そうか。決してだな」
「手放されればそれで終わりです」
「そうだな」
王も彼のその言葉に頷く。話を聞いてその通りだと思ったからだ。
そしてだ。そのうえで王は自分からも話した。
「私は。今手にしているものを絶対にな」
「手放してはなりません」
「手放したその時は」
「陛下が最もよく御存知かと」
「その通りだな。まさにそうだ」
王は自分の心の中を覗いた。そうしてから答えたのだった。
「私は今手にしているものを手放してはいけないな」
「何があろうともです」
「ではだ」
顔をあげた。決意した顔になっていた。
「彼を呼んでくれ」
「ワーグナー氏をですか」
「そうだ。先には帰ったそうだな」
「はい、宮殿の入り口まで来たそうですが」
「それでもです」
「帰ったようです」
このことをだ。彼等は話すのだった。そこに首相や男爵達の謀略があったことはだ。彼等は知らなかった。誰もが知らなかったのだ。
だからこそだ。彼等は今は怪訝な顔で話すのだった。真実を知らない故に。
「おそらく何かしらの事情があったようです」
「それが何故かはです」
「ワーグナー氏御自身だけが御存知かと」
「そうか。それではだ」
王はその話を
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