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くにはちぶ  無作為に選ばれたのが殺人鬼だったら
SS  無作為に選ばれたのが殺人鬼だったら
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 『無作為選出対象者無視法』、通称くにはちぶ制度が法案として認められた。

 無作為に対象者を選び、日本国のすべての国民達が対象者を無視するという内容だ。

 これは、虐められる側の気持ちを体験させる狙いがあるそうだが……。すでに数名の対象者が自殺…、または対象者だからと無視した事故死などしている。

 そして、次の対象者が選ばれることとなった。

 選ばれたのは、とある高校にいる、留年した男子高校生だった。

 その少年…いや青年は、くにはちぶを告げに来た役人に対してこう言った。


「くにはちぶの対象になる、一年間。毎日…必ず一人、または多数大勢、誰かを殺す。」


 対象者として告げられた段階で、くにはちぶが始まっているため、青年が役人に突き出したナイフを止めようとした教師がまず逮捕された。
 元々、学校で浮いていた表情の乏しいその青年は、次の日から、宣言通りのことを実行し始めた。

 まず、通行人を適当に選んで刺殺。

 くにはちぶの対象者を通報しようとした人間達が逮捕された。
 犠牲者の遺族が対象者を訴えたが、逮捕された。

 次に、爆弾を教室の中に投げ込んで爆破させ、多数の死傷者を出した。

 口がきける状態だった怪我人が誰がやったのか訴えたところ、逮捕された。
 被害者遺族達は、我慢できず訴えたが、逮捕された。

 次に、青年は、自衛隊に忍び込み、ミサイルを使って街一つ焼いた。

 国を守る組織が対象者に武器を提供したのかとお門違いな反旗運動が起こった。

 次に、青年は、薬品を混ぜて作った毒ガス弾を、幼稚園に投げ込んだ。
 毒ガスにやられ、多数の園児達が中毒死した。

 対象者を非難すれば、逮捕されると学習した遺族は、幼稚園の管理体制のずさんさを責めた。

 こうして次々と、一日に必ず、無差別に誰かが対象者に殺された。

 そんな中国民達の中にある感情がフツフツと湧いてきていた。

 くにはちぶ制度に対する巨大な不満が。

 そしてある日、ついにその感情は爆発し、国民達は決起した。

 くにはちぶ制度を作った国家を責めた、憎んだ。

 こうして、一年とせず、くにはちぶ制度を作った総理は辞任においやられ、くにはちぶ制度の対象者に大切な人を奪われ続けた遺族達に殺されたとか。

 くにはちぶ制度は、撤廃され、対象者だった青年は逮捕された。

 牢屋の中で、死刑を待つ青年は、ぽつりと呟いた。


「……もう…、くにはちぶは無いよ。」


 死刑台に上がるときも、満足した顔でいたと言われる。

 ネット上に上がった噂によると、その青年の恋人だった少女が、くにはちぶの対象者
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