45話:泥沼
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を煽り、お代わりをオーダーする。
「無茶を言っているのは承知しているが、大きな金額は動かせない。対抗策はあるのだろうか?厳しい話だけで終わると、帰宅してから寝つきが悪くなりそうな所だが......」
「資金が使えるなら、相手の策を一歩進めて無人艦の開発だが、これにはレベロが思う大金が霞むくらいの金額がかかるだろう。現実的には、戦線を大きく下げるか、もしくはイゼルローン回廊まで戦線を押し出すかだな。メンテナンスをする以上、帝国の艦隊は展開するのにある程度の領域が必要だ。回廊出口付近なら展開に困るはずだ。戦線を引き下げれば、帝国の補給線に負荷をかけられる。悪くはない策だが、今の軍上層部や市民たちからすると、負け犬の戦略などと言われるだろうな」
「仮に回廊出口付近まで戦線を押し出しても、前線を維持するためにこちらの補給コストは大幅に上がるだろうし、詳細は不明だが、帝国はイゼルローン回廊に人工天体の要塞を建設したはずだ。補給の面では向こうの優位性が動かない。戦線を下げる選択は、政府としても軍から提案されても受け入れられるとは思えないな......」
「戦線を押し出すには当然戦闘が発生する。前線には3〜4個艦隊が常時遊弋しているから、優位に戦うには戦力化できている宇宙艦隊を全てつぎ込む必要がある。12個艦隊の内、充足しているのは半分に満たない状況だ。6個艦隊で押し出して補給線を太くするまで、帝国の反撃を抑える意味で張り付けなければならない。短くて2年はかかるだろうな。そのあとも4個艦隊は張り付けなければ戦線を抜かれるだろう。レベロには残念な話だろうが現状維持と比較して、予算も戦死者も大幅に削減できるとは断言できない」
シトレと酒を飲むときはなんだかんだと最後は明るくなれたものだが、前例は覆されるモノらしい。しかも嫌な方向へだ。横目でみると、シトレはロックグラスに視線を向けながらなにやら考え込んでいる。民意を無視出来るなら戦線の後退が唯一の選択肢だが、それをすれば落選する。政府がそんな決断ができるとも思えないし、軍がそれを言い出せば自分たちの負けを認めるような物だ。
「私は軍事は素人だが、現状維持しながらなるべく戦死者を出さないことに専念してもらうくらいしか対策が思いつかん。すまないなシトレ......」
「レベロ、何度も言わせるな。責任を抱え込むのが君の悪い癖だ。軍事の件は軍人が考える。そこまで責任を感じることは無い」
シトレの分厚い手が肩に置かれる。自分もつらい立場だろうに、私はいつも励まされてばかりだ。楽しむには少し苦い酒になってしまった。それはシトレも同感だったようだ。いつもより早めに切り上げて、家路についた。
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