魔王山
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果か、正面から戦っても対処できた。
魔王領周辺に棲む獣は、私の知るそれらと見た目は似ていても、実は遥かに凶暴なのだが、元いた土地では戦いとは無縁だったこの時の私は、それに気づかない。
そして、緊張する私の前に、次に姿を現したのは、熊のような体躯を持った、真っ黒な狼だった。
なんて大きさなの……!?
それは、ヘルハウンド、別名"地獄の番犬"と呼ばれる、魔王領周辺に生息する特に凶暴な肉食獣だったが、この時の私は、そんなことは知らなかった。
ヘルハウンドは、こちらを見つけると、足を止めて、じっと睨みつけてきた。
重く感じていたショートソードが、恐ろしく頼りない。
ヘルハウンドが吼えた。
それは、狼のものではなく、獅子のような咆哮。
体が震えあがる。
だが、勇気を振り絞って、私は構えた。
睨み合いが続くかと思われたが、次の瞬間、ヘルハウンドが動いた。
来る……!?
巨体とは思えないスピードで跳び上がり、前足の爪を振り下ろしてくる。
それをなんとかかわして、すれ違う。
ヘルハウンドは、すぐに向き直り、第2撃目を加えてきた。
今度は、カウンターを狙う。
私は、振り上げられた前足に、ショートソードの斬撃を合わせにいった。
前足を封じられれば、逃げ切ることもできるという判断だった。
ゴスッ、と鈍い音がして、刃と前足がぶつかる。
衝撃で、手首が壊れてしまうのではないかと思えるほどの重量が、襲い掛かってきた。
固い……!?
爪ではない場所を狙ったはずなのに、皮膚が固く、刃が通らない。
このままでは押しつぶされると判断し、急いで剣を引いて、後方に避ける。
だが、反動で地面に転がってしまう。
なんとか、握った剣は放さない。
が、体勢の崩れたそこに、ヘルハウンドの第3撃目が来た。
まずい!?
必死に、体勢を立て直して後ろに跳ぶ。避けきれない。
ヘルハウンドの鋭い爪が、着ていた皮鎧の胸元に食い込んだ。
「!?」
それは、心臓を抉り取るような一撃だった。
死に物狂いで、顔面に剣の一撃を加えて、わずかに怯んだところで、一気に距離を取った。
肩で息をしながら、胸元を確かめると、皮鎧が腰の辺りまで、完全に裂けていた。
即座に後ろに跳んだおかげか、辛うじて、傷は皮膚までは届いていない。
運が良かった。
第4撃目はすぐには来なかった。相手もこちらを睨んでいる。
今の自分では、とても勝てない。
それは理解できた。
だが、この獣と追いかけっこをして逃げ切れるだろうか?
獣の足は速い。とても、逃げ切れるとは思えなかった。
冷静に、手段を探している自分に少し驚く。
昔の自分なら、何も考えす背を向けて逃げただけだろう。
そして、背中からあの
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