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Evil Revenger 復讐の女魔導士
魔王山
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れなかった。
 だから、数日前の剣の稽古の時、いつも使っている短剣ではなく、以前、まともに振るえなかったショートソードを持っていったのである。
 そして、いつもの短剣と変わらぬ動作でそれを振るい、稽古を最後までこなして見せた。
 褒めてほしかった。驚いてほしかった。
 よくやった、とその一言が欲しかっただけなのだ。
 だが、その時の彼は、
「よし、明日からの訓練では、それを使え」
 いつもと変わらぬ口調で、ただそう言っただけだった。
 悔しかった。
 彼に、どうしても認められたかった。認めさせたかった。
 だから私は、たった1人でこの山──魔王山に来たのだ。
 この山には、一週間ほど前に、一度、挑んでいた。
 その時は、ネモに連れられ、訓練の一環として、ここを登ったのだ。
 私は、山の中腹辺りまで登ったところで、音を上げた。
 ネモも、始めから頂上まで行く気はなかったようで、あっさり引き返すことを決めた。
「俺自身も、仲間数人を伴って登り切ったことがあるだけで、1人で頂上まで辿り着いたことはない」
 彼はそう言った。
 この山に来るのは、それ以来である。
 昨日、私はネモに向かって、1人で魔王山に挑みたいと願い出た。
 ネモは、最初は、その提案に中々首を縦に振らなかったが、しつこく食い下がる私に、最終的には折れた。
「無理だと思ったら、すぐ引き返せ。日没までには、必ず麓に戻るようにしろ」
 彼は、そう釘を刺した。
 この魔王山の頂上には、辿り着いた者達が、証として名前を刻んだ大岩があるらしいと聞いている。
 ネモは、私が頂上に辿り着けるなどと、微塵も考えていないだろう。
 私が1人で、頂上の岩に名前を刻んで来れば、彼を驚かせること、彼の鼻を明かすことはできると考えた。
 もし、彼がそれを信じなければ、後に頂上まで引っ張って行って、見せつけてやればいい。
 麓から山を見上げ、私はそう思った。

 私は、岩肌の山道を速足で登っていった。
 ここは、山としては、それほど大きいものではなく、標高だけで見れば、一日で頂上まで辿り着けるものだった。
 だが、多くの難所が、簡単にそれをさせてくれない。
 今も、まだ麓からそう離れていないというのに、早速、霧が濃くなってきていた。
 私の手元には、ネモから受け取ったコンパスがある。
 頂上に近づくほど激しい霧に覆われている魔王山に挑むには、必須の道具だった。
 この山も、魔王領周辺の地形と同じく、殆どが岩肌で、木々が少ない。
 それゆえ、空気が薄く、平地よりも遥かに早く体力を奪われるのだ。
 前回の中腹辺りまで辿り着いた時は、表面上は、いつもの訓練のように、激しい鍛錬を行っているわけでもないのに、あっという間に息が上がっていたことに驚いた。
 なるほど
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