第二章
[8]前話
「歯が早いうちに戻るかも知れない、それで歯を磨いていると虫歯以外にもならない」
「そうだよ、というか身体もお部屋もな」
どれもというのだ。
「何処も奇麗にしないといけないだろ」
「お口の中だってだね」
「だからな」
それでというのだ。
「歯磨き続けていけよ」
「そうしていくね」
「ただそうされるとな」
「またそう言うんだ」
「ああ、歯磨きを続けられるとな」
雑菌つまり掃除で倒される彼にとってはというのだ。
「困るんだよ」
「その割に前から親切に話してくれるね」
「それはあれだよ」
「あれっていうと」
「居場所を提供してくれてるからな」
だからだとだ、虫歯菌は入れ歯くんに答えた。
「大家さんだからな」
「それでなんだ」
「そうだよ、大家さんにはちゃんとしないとな」
「礼儀正しく?」
「それで色々とさせてもらわないとな」
そうしないと、というのだ。
「駄目だからな」
「それでなんだ」
「おう、話をさせてもらってるんだよ」
入れ歯くんが言う親切にというのだ。
「そういうことだよ」
「そうだったんだ」
「それじゃあこれからもな」
「うん、君には嫌なことだけれどね」
「歯磨き続けていけよ」
「そうさせてもらうね」
入れ歯くんは虫歯菌に笑顔で答えた、そしてだった。
実際に歯磨きを続けた、そうして口が奇麗なままやがて医学の進歩で天然の歯が戻った。するとこの時も虫歯菌に言われた。
「また言うけれどな」
「これからもだね」
「おう、歯磨きはな」
それをというのだ。
「続けていけよ」
「そうさせてもらうね」
「お口の中から色々出入りするしな」
「身体の中にね」
「だから本当にな」
「お口はだね」
「いつも奇麗にしていかないと駄目なんだよ」
何はともあれという言葉だった。
「御前さんがそうしているみたいにな」
「そうだね、虫歯にも歯槽膿漏にも気をつけないといないし」
「口の匂いだってあるだろ」
「僕それ言われたことないよ」
「それはいつも奇麗にしているからだよ」
まさにそのお陰でというのだ。
「だからだよ」
「それでだね」
「そうだ、歯を磨けばその分健康になる」
「このこともだね」
「覚えておいてくれよ」
「そうさせてもらうね」
入れ歯くんは歯が元に戻った口でその口の中にいる虫歯菌に笑顔で答えた、虫歯菌も自分にとっては嫌なことでも入れ歯君にアドバイスを続けた。そうして一緒に生きていくのだった。
虫歯にならない 完
2018・9・25
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ