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虫歯にならない
第一章
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               虫歯にならない
 入れ歯くんには歯がない、永久歯を抜いたから二度と生えない。だがそれでも彼はいつも歯磨きを言っている。
「歯は大事だからね」
「それでだよね」
「入れ歯くん歯を磨いているのよね」
「いつもそうしているのよね」
「それでお口を奇麗にしているのね」
「そうだよ、確かに僕は入れ歯だけれど」
 それでもというのだ。
「ちゃんとね」
「歯を磨いてだよね」
「奇麗にしているのね」
「何か食べたら絶対に磨く」
「そうしているのね」
「そうなんだ、さもないとね」
 入れ歯くんはいつもこう言っていた。
「お口の中が汚くなるからね」
「それでだね」
「いつもお口を奇麗にする為にも」
「磨いている」
「そうなのね」
「そうなんだ、これからもそうしていくよ」
 こう言ってだ、実際にだった。
「ずっとね」
「汚いより奇麗な方がいいし」
「それじゃあね」
「これからもだね」
「虫歯君は歯を磨いていくのね」
「そうしていくよ」
 笑顔で答える入れ歯君だった、そして実際にだった。
 入れ歯くんは歯磨きを欠かさなかった、それで天然の歯こそなかったが口の中は常に健康であった。このことについて。
 入れ歯くんは一緒にいる虫歯菌にこう言われた。
「歯を磨くことはいいことなんだぜ」
「そうだよね」
「ああ、俺にとっては悪いことでもな」
 このことも言う虫歯菌だった。
「何しろ歯を磨くことはな」
「君達をやっつけることだからね」
「いい筈がないぜ」
 それはというのだ。
「やっぱりな、けれどな」
「それでもなんだ」
「あんたにとってはな」
 入れ歯くん自身にとってはというのだ。
「いいぜ」
「そうだよね、じゃあこれからもね」
「磨いていけばいいさ、それとな」
「それと?」
「最近医学の進歩が凄いらしくてな」
 それでというのだ。
「歯の復元が出来る様になるかもな」
「へえ、僕お医者さんになって自分でって思ってたけれど」
「ひょっとしたらその前にな」
「歯を戻すことが出来るんだ」
「そうなるかもな」
「それはいいことだね」
「ああ、あとな」
 虫歯菌は入れ歯くんにさらに話した。
「歯磨きは虫歯だけじゃないぜ」
「お口の中を奇麗にするからだな」
「歯茎とかにもいいんだよ」
 そこにもというのだ。
「歯槽膿漏にもならないんだよ」
「歯槽膿漏ね」
「知ってるよな」
「うん、お口の病気だよね」
 入れ歯くんもすぐに答えた。
「歯茎から血が出るっていう」
「それもならないからな」
 歯磨きをしっかりとしていると、というのだ。
「いいんだよ」
「そうなんだね」
「だから俺達にとっては嫌なことでもな」
 虫歯菌はこのことは断った
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