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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
44話:保育園
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通信を終えると、私以外の当事者の2人の所へ足を運ぶ。俺が、保育士だとしたら、理事長と園長という所だろうか。もっとも俺は金という報酬を得られるが、この二人は要塞が完成しなければ名誉という報酬が得られないばかりか、万が一にも完成しなければ面子が潰れる訳だ。この宇宙に少なくとも2人は、俺より悲惨な境遇の人間がいると思うと多少は溜飲が下がる。無駄に造りの良いドアをノックして、了承を得てから入室する。

「おお、ルビンスキー、自治領主府への報告は終わったか?」

オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク改め、理事長がこちらに声をかけてくる。室内にはもう一名、園長ことウィルヘルム・フォン・リッテンハイムもいたが、まだ昼間だというのに酒を飲んでいたようだ。多少でも現状をまともに認識できれば酒を飲みたくなるのは分かるが、同じ船に乗っている人間としては、いま少し自制心を持ってほしいと思うのは過ぎた望みなのだろうか。今、そんな不毛な思いに囚われても仕方がない、俺は状況を報告する。

「自治領主府でも資材価格の高止まりが各方面に与える影響を懸念する声が強まっているとのことでした。特に、私どもの常識にない事態での工期の遅れにも懸念があるとのことです。一部からはいつ大事故が起こるか分からない為、保険料の値上げも迫られています。私ひとりではどうしようもない状況です」

二人は渋い顔をしながらワイングラスを煽る。もう酒の件は見なかったことにして話を進めよう。

「ここで2つほどご提案がございます。現場に部外者が行けば混乱が起こります。そこで、既に設計図はあるわけですから、皆様の居住区画については、モジュール工法に差し替えますので、それぞれのご領地で作成頂いては如何でしょう?やることがあれば、こちらに足を運ぶ方も減るのではと考えております。

二つ目ですが、主砲区画は拡張の余地を残しつつ、将来的により高性能なものが出るまで、換装しないことをご提案します。一部から、完工式に試射式をやるためだけに巨額の予算をかけることに疑義が出ております。アルテナ星域は帝国内の主要航路ですから、主砲を完成させたとして、試射した際に何かあれば、政府や宮廷がどう受け取る分かりません。留保しても良いのではという声もございました」

「うーむ。しかしこの要塞は次期当主である我らから一門や寄り子へのお披露目の品でもある。手伝わせるのはいささか外聞が悪いのではないか?」

「主砲の件もな、完工式に試射のボタンを押したがっておる者も多い。作らぬと言う訳にはいかぬように思うが......」

理事長と園長が、グラスにワインを注ぎながら渋い顔で答えてきた。それは想定済みの回答だ。

「ご懸念はごもっともでございます。ただ、実際にお使いになる方々にお好みの物を用意していただくのも次期当主とし
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