二十三匹め
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「ぅきゅ?」
パチ、とシラヌイが目を開けた。
体を起こすとパサと毛布が落ちる。
「ソファーの上…? どこだろここ…?」
シラヌイは辺りを見回した。
目が合った。
「シラヌイ!」
金髪金眼の少女じみた容姿の女がシラヌイに駆け寄り、ギュッと抱き締めた。
「心配したんですよ!」
「………ごめんなさい。おか……シェルムさん」
シェルム・フォン・シュリッセル、シラヌイの母だった。
「『母』とは、呼んでくれないのですか?」
抱擁を解いたシェルムがシラヌイと目を合わせる。
「…………………」
「お母様から聞いています。貴方には前世の記憶があると」
「はい。だから、僕はもう貴方の息子では居られないんです」
「それでも貴方にはあるのでしょう!この五年の記憶が!」
「でも…でも…僕…には…」
シラヌイがうつむく。
「なら! どうして貴方はそんなに辛そうなのです!」
「僕には貴方の息子だって記憶がある!
でも!もう僕は貴方の知る僕じゃない!」
そう捲し立てた。
「それでいいではないですか! 貴方はいったい何を恐れて私を母と呼ばぬのですか!」
「貴方が僕を!俺を嫌わないって証拠がどこにある! いつか貴方が僕を嫌って僕を殺さないって確証が!どこにあるんだ!」
シラヌイが頑なにシェルムを母と呼ばないのは、嫌われたくないからだ。
嫌われて、殺されたくないからだ。
「どこに息子を殺す母が居ますか!」
「だから僕はもう貴方の息子じゃないんだ! 僕はもう貴方が知ってるシラヌイとは別人だ!」
それがトドメだった。
「…………………ぅう」
「?」
「ふぇぇぇ…」
(お母様が泣いた!?)
「どうして私はだめなんですかぁ〜! お母様やボーデンだけずるいです〜!
私のこともお母様ってよんでください〜!」
「えぇ…?」
突然駄々っ子のように泣き出したシェルムに呆然とするシラヌイだった。
所変わってシェルムの部屋。の扉の前。
そこでは四人の人間が聞き耳を立てていた。
「筆頭の駄々っ子モードだと…!?」
「あ、あんなシェルム見たことない…」
「マジかよシェルム先生」
「あ、あれが宮廷魔導師筆頭…?」
「おー…。五百年ぶりかのー…」
上からアルフレッド、ブライ、ボーデン、ルル、タマモ。
もしくは国王、師団長、国家錬金術師筆頭、宮廷付侍女、王宮相談役である。
「シェルムの奴そうとうキテおるな…」
「お義母さん、シラヌイは何故ああもシェルムを拒絶するのですか?」
「そーじゃのー…。考えられる理由はシラヌイの
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