フェアラートの名
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でに皺が入り始めた手のひらであるが、そこに熱をもって握ったのはいつ以来だろう。
彼女の結婚相手に相応しく、頑張ろうとした若いころまでさかのぼらなければならないかもしれない。
そんなアロンソの様子に、リアナはほほ笑んだ。
が、すぐに表情が真面目なものになった。
「あの子の候補が見つかりまして」
「な、いや。そういうわけではない――違うぞ」
驚いたようにアロンソは否定を言葉にする。
+ + +
リアナ・フェアラートの家系図を遡れば、過去にはアーレ・ハイネセンとともに脱出して、グエン・キム・ホアとともに、この惑星に最初にたどり着いた人間にさかのぼる。
最も血が家系を豊かにするわけではない。
ハイネセンにたどり着いてからから、フェアラート家が企業として成長したのは、偏に努力によるものだろう。
一介の農家から始まり、資源開発や輸送にまで手を伸ばす。
時代を経て、フェザーンから多くの企業が入ってもなお、フェアラートが培った地盤は自由惑星同盟ではいまだに大きな力を保持していた。
通常であれば、女性の経営者など珍しいものであっただろうが、最初の当主はハイネセンにたどり着く前に亡くなり、残されたのが一人の女性であった。
女性が代表であることが、むしろ当然という環境であったのだ。
わずか十数年ほどで頭角を現して、現在の地位まで上り詰めたリアナ。
その次にと考えているのは、彼女以上の才能を持った――娘だ。
真っ直ぐな視線が、アロンソを見る。
厳しい目をする夫の眼光の奥に光るのは、戸惑い。
それは誰よりも知っているからこそ、わかる。
明確な拒絶ではなく、戸惑いだと。
娘が士官学校に行くと行った時には、アロンソもリアナも否定をした。
娘にあえて危険な道を進ませる理由もなかったからだ。
だが、アロンソもリアナも娘の性格をよく知っていた。
良くも悪くも、誰がいても自らが決めた道は曲げられない性格なのだ。
そう考えれば、考えるのは早めに結婚させるということだ。
帝国軍に比べれば、女性にも開かれているとはいえ、同盟軍であっても多くは結婚とともに退職することが多い。
リアナは民間から優秀な人材を娘の結婚相手に紹介した。
結果。
お通夜だった。
民間で優秀だという、企業の御曹司を紹介した。
その結果、娘との見合いに最後まで残った者はいない。
お見合いという形のお通夜は、他人事ならば見事といってもいいものであろう。
どんな会話上手も知識人も、娘を攻略することはできなかった。
その取り付く島もない様子から、紹介した提携先をいくらか失って、リアナは確信した。
娘はフェアラートなどどうなっても良いのだと。
彼女は自らの意思
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