第三十一話 TABRIS
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は考える。
なぜツムグは、カヲルと戦う相手は自分だと指名したのか。
覚醒していないとも言われた。
それが何を意味するのかは、まったく理解できない。
確かに自分だけが他のミュータントと違い、使徒の精神波長はおろかカヲルの洗脳さえ効かなかった。
なぜ自分だけがっと尾崎は自問自答する。
尾崎の思考が災いしてか、戦いにすきを作ってしまい、もろに胴体に蹴りを受けてしまった。
尾崎が崩れ落ちると同時に、風間の拳が顎に決まって尾崎は飛ばされた。
地に落ち、荒く呼吸をしていると、風間が近づいてきて、馬乗りになってきた。
そしてその手が尾崎の首にかかる。
「ぐっ…。」
ものすごい力で絞められる。
顎に受けたダメージで頭がグラグラする。
風間は無表情で尾崎の首を絞め続ける。
このままでは死ぬと分かっていても抵抗する力が湧いてこない。
意識が薄れていく。
人は死ぬ時走馬灯というものを見ると言うが、今尾崎の脳裏をこれまでの楽しかったことや苦しかったことなどの様々な思い出が過る。
ああ、自分はここで…っと、尾崎はパタリッと手を地面に落とした。
その時だった。
「尾崎君!」
その声を聞いた時、尾崎は目を見開き風間の体を渾身の力で弾き飛ばした。
弾き飛ばされた風間は、地に着地し尾崎を睨みつける。
「美雪!」
ボロボロの白衣を纏った音無が瓦礫を支えにしながら泣きそうな顔で尾崎を見ていた。
さっきまで死を受け入れようとしていた自分が嘘のように消えた。
自分は、こんなところで死ぬわけにはいかないのだという意欲が湧いてくる。
そうだ、なぜ忘れていたのかと。
自分には守るべきものがある。守ると約束した相手がいるではないかと。
戦わなければならない。
守るために。
大切な物を守るために。
そのためには、どうするべきか……。
目の前にいる操られてしまった友を見る。
その時。尾崎の中で湧きあがる大きな力を感じた。
なんだ、答えは自分の中にあったのだと、その瞬間、理解した。
風間が雄叫びをあげながら、飛び掛かってきた。
尾崎は、冷静な表情でそれを見据える。
すると、風間の体が弾きと飛ばされた。
見えない何かに弾かれた風間は、困惑した表情を見せ地に転がる。
尾崎は、ゆっくりとした調子で風間に近づいた。
風間は、一瞬ビクリッと震えるがすぐに構え直し、再び尾崎に飛び掛かった。
風間の拳を手で受け止め、反対の手の拳が風間の腹部に決まった。
その衝撃で嘔吐した風間は、地面に転がされた。
たった一撃でここまでなったことはない。
明らかに威力
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