第三十一話 TABRIS
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シンジは、レイを背負った状態で小さな瓦礫が散乱する避難通路を歩いていた。
「いったい何が…。」
シンジのその疑問に答える者はいない。レイはいまだ意識がない。
背負って分かったが、彼女の鼓動がしっかりある。レイは生きている。実験が成功したのかは別にして、レイはちゃんと生きているのだ。
それだけでもシンジの折れそうな心に力を与えてくれる。
やがて避難通路が終わり、外へ出ると……。
「な、なんだよ、これ…!」
外は酷い有様だった。
基地のあちこちから黒煙があがり、建物が倒壊しているものもある。
あちらこちらから悲鳴が聞こえ、銃声や爆発も聞こえる。
茫然としているシンジのところへ。
「あ、宮宇地さん!」
宮宇地が歩いてきた。
ゆらりとした怪しい足取りであったのだが、彼の無事な姿を見てシンジはそのことに気付かなかった。
「何があったんですか!」
「……。」
「宮宇地さん?」
シンジの近くに来た宮宇地は、無表情で無言だった。
そしてその腕が振りかぶられた。
「えっ?」
シンジが呆然とそれを見ていると。
パンッと銃声が鳴り、宮宇地が後ろへ飛びのいた。
「シンジ君、レイちゃん!」
「志水さん!?」
銃を構えた志水がいた。
「逃げなさい!」
「えっ?」
「いいから!」
志水が銃を構えたまま叫ぶ。
すると宮宇地が高所へ飛び、姿を消した。
志水はそれを確認すると、銃をおろしてシンジらのもとへ走ってきた。
「なに? 何が起こっているんですか?」
声が震えるシンジに、志水は落ち着くよう声をかけ。
「ミュータント兵士達が……、急に暴れだしたのよ。」
「えっ?」
それは信じられない内容だった。
ミュータント兵士達が、突然基地内部で攻撃を始めた。
それだけじゃなく、強力なATフィールドが確認され使徒の出現を感知する識別装置が反応した時には、建物などが倒壊するほどの破壊が起こっていたのだという。
ミュータント兵士達は、全員正気とは思えない状態で、ただ淡々と攻撃を仕掛けてくるのだという。
まるで何かに操られているかのように…。
「宮宇地さん達が…、そんな!」
「どうしてこんなことになったのか分からない。とにかく今は安全な場…。」
志水は言葉を最後まで言い切る前に、一瞬にして姿が消えた。
「えっ?」
シンジの顔に赤黒い液が飛び散る。
横を見ると、建物の壁に大きな染みができていた。
そしてこんな状況だというのに、酷く落ち着いた、少年の声が聞こえてくる。
「やあ、君達は無事だったんだね?」
呆然としているシンジの耳に、少年の声が響
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