第三十一話 TABRIS
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「分かった。」
「……。」
尾崎の横でカヲルは、黙ってそれを聞いて観察していた。
「いつもなら鍛錬でもして事務から逃げてるのにな〜。どうしたんだろ?」
「もしかして何かあったのかも…。」
「えっ? 大佐が? ないない、あの人をどうにかできる相手なんているわけないだろ。」
「そうだな…。そう思いたいよ。」
「おいおい、どうしたんだ尾崎?」
「……嫌な予感がするんだ。」
「……マジで言ってんの?」
「ああ…。あれ? カヲル君は?」
ふと横を見たらカヲルの姿はなかった。
いつの間にかいなくなっていたらしい。
***
レイとシンジは、長椅子に座っていた。
周りには忙しなく動く研究者や医者達がいる。
もうすぐ始まる、レイを人間にする実験の準備である。
レイは、裸の上に患者が着る手術着を纏っている。シンジは、全身を防菌装備の頭だけを出した状態で固めている。
二人の間にずっと沈黙が流れていた。
何か喋って気を紛らわそうと思っても言葉というのは中々出てこないものである。ましてや今から生死をかけた実験に挑むのだ。その緊張は計り知れない。
シンジは、ちらりとレイの横顔を見た。
昨日さんざん泣いたため、目元が少し赤くなっている。
パッと見は無表情を装っているが、手元を見たら腿の上で強く手を握りしめていた。
これから戦うのは彼女なのだ。
実験の内容は事前に聞いていた。全身の細胞を作り変える過程での凄まじい苦痛があること。それに耐えられなければ死ぬであろうこと。
ならば自分に何ができると、シンジは自問自答する。
シンジは、そっと手をレイの握りこぶしに乗せた。
ビクッと震えたレイは、シンジを見る。
シンジは努めて笑顔を作った。
その笑顔を見たレイは、こくりっと頷き微笑んだ。
「レイさん。始めますよ。」
すると研究者が二人の前に来て、実験の準備が整ったことを伝えた。
二人は立ち上がり、シンジは、防菌マスクなどの装備を整えた。
研究者に導かれ、二人は実験室に入った。
中央に様々な機器と巨大なビンのような筒に詰まった薄い赤い液体、手術台が置かれている。
壁はガラス張りで立ち合いに来た研究者達や医師たちと思われる姿があった。各々記録帖のような物や、タブレットを持っている。
「そこに横になってください。」
しかしすぐには横にならない。
「碇君…。」
「うん。分かってる。」
二人は、ギュッとお互いを抱きしめ合った。
それはそれはレイが頼んだこと。実験が始まる時はギュッとしてという。
数分ほど抱きしめ合った後、二人は離れ、レイは、指示通り手
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