第三十話 ふぃあと渚カヲル
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14歳の少女が人間になって戻ってきてくれることを疑いなくないという気持ちがみんなにあった。
特に。
「なあ、綾波…。」
「なに?」
「っ、なんでもない。」
シンジは特にそう思いたかった。レイが無事に戻ってきてくれることを。
本当はもっと話をしたい。だが言葉が出てこない。
そんなもどかしさにシンジは、内心苦しんだ。
そうしてささやかなパーティは、終わった。
「シンジ君。送ってあげなさい。」
「えっ?」
「いいから。」
「は、はい。綾波!」
志水におされてシンジは、レイのもとへ行った。
「なに?」
「い、一緒に寮に戻ろう。」
「…うん。」
レイは、頷いた。
M機関の施設から寮に戻る途中。二人は無言だった。
何か話さなければいけないのに言葉が得てこない。
シンジは、ちらりとレイの手を見た。
ここで手を握るべきか、いかないべきか。手が泳ぐ。
すると、レイの手がシンジのその手を握った。
「っ…。」
「碇君…、あのね…。」
「な、なに?」
「…なんでもない。」
「そ、そう…。」
レイは何か言いかけてなんでもないと首を振った。
歩いていればやがて寮についてしまう。部屋は違うので、別れなければならない。
だが二人は立ち止まってしまった。握った手を離さずに。
二人は何も喋れずにいた。
先に口を開いたのは…。
「綾波…。」
「碇君…。」
ほぼ同時だった。
重なってしまって焦ったのか。
「綾波から、どうぞ。」
「碇君から…。」
「ええっと…。」
「……。」
焦ってまた言葉にならない。
すると。
急にレイが涙を零し始めた。
「綾波! どうしたの!?」
「………怖いの。」
慌てるシンジに、レイがぽつりと言った。
「あのね……。もう碇君に一緒にいられなくなるかもって…、思ったら……、怖い。どうしたらいいの…?」
「綾波…。」
「ねえ碇君…。実験の時、ギュッてして。私、死にたくない。」
レイの涙はますます零れ落ちる。
「碇君と一緒にいたいから、死にたくない…!」
「綾波…。」
シンジは、手を離した。
レイがそれに驚いていると、シンジは、レイの体を抱きしめた。
「僕だって……、綾波がいなくなったら嫌だよ!」
シンジも涙を目に溜めた。
「碇君…。」
「ずっと一緒にいたい!」
「…私も。」
二人は抱きしめ合い、しばらく泣いた。
実験は、翌日に迫っていた。
***
翌朝。
「ゴードン大佐…さんですよね。」
「なんだおまえは?」
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