第三十話 ふぃあと渚カヲル
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リツコもそれは予想外だったらしい。
そこまでレイの精神が成長していたことに素直に驚いた。
「じゃあ、なにがなんでも人間にならなきゃいけないわね。あの子もそれを思って実験に望むでしょう。」
「ああ、そんな様子だよ。耐えて見せるってさ。」
「そう。」
リツコは、レイの成長を喜び笑った。
「でも不思議よね。あなたの声や言葉は初対面なのに耳に浸透するというか…。不思議と信じられる。」
「人によっては、洗脳してるって捉われてるけど、そんなつもりはないよ。」
ツムグに対して不信を持つ人間達は、だいたいそう捉えているっぽい。
「そう思われても仕方ないわよ。あなた胡散臭いもの。」
「用はもう済んだから帰るね。」
ツムグは、そう言うと研究室から出て行った。
ツムグが去った後、リツコはどかりと椅子に座った。
額ににじんだ汗を手で拭う。
「あれがG細胞完全適応者……。なんていうか……、気味が悪い存在ね。」
ツムグの表情は笑みを浮かべていて、何を考えているのか分からない。
「彼も彼で何を考えているのやら……、疑問が増えちゃったわ。」
ツムグが何を考えて行動しているのか、その理由も気になってしまった。
そういえばと、過去のゴジラの資料をパソコンに表示した。
デストロイヤとゴジラの戦闘でメルトダウン寸前だったゴジラが突然元に戻ったということがあった。この際にG細胞完全適応者が関わっているというデータが解散前の地球防衛軍にあった。なぜそれを今リツコが閲覧できるかというと、一回解散した結果、データが国連軍の倉庫に眠り、そのコピーが出回ってしまったためである。真実かどうかは別として。出回ってしまったことが逆に真実味を失せさせてしまったのだ。当事者でもない限り、真実は分からない。
このデータによると、椎堂ツムグは、本気で死にかけたらしい。頭を潰そうと、心臓を潰そうと、焼こうと、浸そうと何をやっても死ななかったのに。なぜかこの時だけは。
「まさか彼は……。」
リツコは、ツムグの目的をなんとなく察した。
「だとしたらとんだ大迷惑ね。周りを巻き込んで…。」
リツコは、溜息を吐き、頭を抱えた。
***
M機関の訓練場で、二人のミュータント兵士が戦っていた。
その戦いは、何十分にも及ぶ長い戦闘で、両者ともに疲弊していた。
「何をやっている!」
部下からの報告を受けた熊坂が駆けつけて、二人の戦いを止めに入った。
大量の汗をかいた風間が汗を腕で拭いながら舌打ちをした。
熊坂を挟んで反対側にいる尾崎は、膝に手を着いて呼吸を整えようとしていた。
「風間、尾崎、無茶な模擬戦闘は慎めと何度言ったら分かる!」
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