第二十九話 椎堂ツムグの決意 その2
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ないという気持ちが込められている。
「ただの散歩だよ。渚カヲル君。」
ツムグは、振り返らずそう言った。
「さんぽ? こんなところに僕を導いておいて?」
追跡者であるカヲルは、リリスを見上げた。
そして顔を微かに歪める。
「……違う。これは、リリスだ。」
「ご名答。」
「“僕ら”はまんまと乗せられたというわけか。」
パチパチと拍手をするツムグの背中を見て、カヲルは、溜息を吐いた。
「君はこれからどうする? アダムはここにはなかった。君がここに攻め入る理由は、たった今無くなったわけだけど。」
「……アダムを探すよ。君達地球防衛軍がアダムを手に入れたんだろう?」
「なんだ、そこまで知ってるんなら、次の目的は決まったも同然じゃん。」
「あなたは嘘つきだ。」
カヲルの声の調子が変わった。どこか責めるような感じだ。
「ふうん?」
「何もかも知ってて何もしない。守るふりして、守ってなんかない。そうやってリリン達を翻弄して楽しいかい?」
「君には関係のないことだよ? どうしたのかな?」
ツムグは、振り返ることなく笑う。
カヲルは、押し黙り、目が泳ぐ。自分でもなぜそんなことを聞いたのか分からなくなったのだ。
「“そんな姿”をしているんだし、君は君が思っている以上に人間に…リリンに興味をもってるってわけ。無意識って奴だよ。」
ツムグは、初めて振り返った。いつものヘラヘラとした笑みを浮かべて。
「ひとつ、言っておく。」
ツムグは、人差し指を立てた。
「君の戦う相手は、俺じゃない。」
「どうして? あなたが真に…。」
「君とは戦わないよ。絶対に。」
ツムグは、笑みを消してきっぱりと言った。
笑みの消えたツムグの目が、黒から一瞬金色に光る。
それを見たカヲルは、たらりと一筋をの汗を垂らした。
「じゃあね。見つからないうちに君もさっさと戻りなよ。」
ツムグは、背中を向けて手をヒラヒラとさせると、その場から消えた。
残されたカヲルは、ツムグがいた場所を見つめ、それから再度リリスを見上げた。
「僕が戦う相手は、彼じゃない? なぜ?」
カヲルには、ツムグこそ、自分達“使徒”と、人間達との決着をつけるべき相手だと思っていた。
しかしツムグは、戦わないと言う。戦う相手は違うと言う。
カヲルには分からなかった。その意味が。
カヲルは、しばらく思考の袋小路に入ってしまった。
***
『もぎせんとー?』
「そうだ。一度でいい。ツムグ以外を乗せて戦ってみてほしいんだ。」
ツムグが外出している頃、技術部と科学部が頑張っていた。
ふぃあを説得するのに。
『エー、く
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