第二十七話 渚カヲル
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のだが…。」
「しかしそれでも確実に成功するわけではない。何事にも成功と失敗を問われるものだ。」
「だがこの実験は一発勝負ですぞ。失敗すれば彼女は…。」
「椎堂ツムグの言うように、量と濃度を間違えば即死なのは、先の彼女の細胞を使った実験で明白。そこで…。」
レイを人間にするための一発勝負の実験は、以下の進められることになりそうだった。
極々薄めたツムグの骨髄細胞を少しずつ、絶え間なく注入していく方式である。
だがこの方法……、体細胞の急激な変化のために全身に凄まじい苦痛を強いられる可能性が高く、レイが耐えられなくなる可能性が高いのだ。
なぜ絶えずなのか。それは先に採取したレイの細胞に行った実験で少しずつ時間をおいてツムグの細胞を与えて馴染ませようとしたところ、時間を置いたらレイの細胞が死んでしまったのだ。
濃かったり多ければ爆発。少なすぎると死滅。
ツムグが言っていたのはこういうことだったのだ。
もう一つの問題が脳細胞などの神経細胞への負担である。ここにダメージが残ってしまえばレイは日常生活を送ることが困難になるのは明白。だがツムグの細胞の再生力が負担で負ったダメージを回復させる可能性もある。絶え間なく注入することで壊れる細胞と同時に再生する細胞を作るエネルギーを与えるのだ。だがそのサイクルでとてつもない苦痛が発生するのである。そのショックで記憶の方が消える可能性も否定はできないのだが……。
「全身の細胞を少しずつ変化させる…。だが細胞を変化させるということは……。」
「…えます。」
「ん?」
「私、耐えます。」
レイは、きっぱりと言った。
その表情には強い決意が見て取れた。
「……ひとつ聞かせてはくれないか?」
「はい。」
「君はどうして人間になりたいんだい?」
彼らのリーダーである老いた科学者鰐渕のその質問に、レイ以外の周りが眼を見開いた。
「死ぬかもしれないのに、どうしてそこまでして人間になりたいんだ? 確かに君がゴジラを呼びせる可能性を持っているのは知っている。それを抜きにしても意地でも人間になりたいその理由を。」
なんてことを聞くんだと周りが声に出さずそんな雰囲気を醸し出していると。
レイが口を開いた。
「碇君といっしょに生きたいから。」
そうはっきりと言った。
その顔には生きることへの希望さえ見て取れる優しい微笑みがあった。
「碇君というと、君が今いるM機関にいる黒髪の少年のことかい? 君は彼と共に生きることを望むから人間になりたいというのかい?」
「はい。」
レイは、しっかりと返事をした。
それを見た周りがざわつく。
保護された当初の人形のような、生気のない雰囲気だった
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