第二十六話 銀髪の少年
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ず、マトリエルのコアに纏わりついているような状態だった。
それが少し目を離した隙に胎児のような姿へと変化したのだ。
これが常識を遥かに超えた生命体である使徒の生命力なのだろうかと研究所内がざわついた。
「アダムの研究ができれば…。あれ卵だったからな。」
「セカンドインパクトの二の舞になりたいのかよ。」
「上の連中もそんなことを恐れてアダムを遠ざけやがってなぁ…。」
「そんなことっておまえ…。」
村神はこういう奴だ。
「そんなことはそんなことだろ。」
「そーだな、おまえはそういう奴だよ。」
「科学の発展のために犠牲は付き物だ。」
こういう奴である。
その時。
ポコンっと胎児に目が生じ、ジロリッと水槽の外にいる村神達を見た。
「わっ、こっち見てる!」
「あー…。」
村神の隣にいた男が気が付いてびびるが、村神は腰を落として胎児の目を見つめた。
顎に手を当てて考え込み。
そして。
「切って(解剖して)みるか。」
「えっ? これを!? やめとけって! なんか嫌な予感しかしないから!」
「嫌な予感がどうした? 失敗を恐れて科学者が務まるか。」
「そ、それはそうだが…。もしこいつがアダムと同じような物だったら…。」
「それがどうした?」
「…もう知らねぇからな!」
村神を止める術を持たない研究者の男は、そう言って逃げるように去っていった。
村神は、特に気にせず、水槽の中にいる初号機の胎児のようなモノを解剖する準備を始めた。
手術着に着替え、解剖用の設備の揃った一室に、水槽から出した胎児を運び込む。
手術台の上に、でろんとプルンと胎児が震える。
メスを取り、胎児の表面を切ろうとすると。
バチンッと光が弾け、メスが弾き飛ばされた。
「! 身の危険を感じたのか。」
弾かれた時の衝撃で手が痺れ、村神は手首を握った。
村神の言葉に反応するように、ジロッと胎児の目が村神を睨んだ。
「なんだ? 私のことが分かるのか?」
胎児は何も答えることなく、村神を睨みつけている。
「やれやれこりゃ捌くのも難しいな…。さてどうするか…。」
村神は、睨んでくる胎児の目線にも臆することなくこれからのことに思いをはせた。
………に…たく……な…い……
微かなその声は、村神の耳には届かなかった。
***
使徒アラエル殲滅から十日以上が経とうとしていた。
尾崎は困った顔でチラチラと風間を見ていた。
風間は数メートル離れた場所で背中を向けている。
アラエル殲滅後に帰還した時、風間に殴られてからというもの、風間は尾崎と口を利かなくなった。
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