第十七話 男の過ち
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ゴジラは、初号機を前にしてすぐには動かなかった。
さすがに不自然に思ったのだろう。多少は警戒しているらしい。
『…嘘でしょう。なんてこった。』
オーバーヒート状態の機龍フィアの中で、様子を見ていたツムグは、額を手で抑えた。
『シンジ君…!』
初号機には、シンジが乗せられていたのだ。
***
リツコは、ゲンドウを睨んでいた。
ゲンドウは、どこ吹く風でモニターを眺めているだけだ。
今リツコの周りは武装した集団で取り囲まれていた。
その中にはミサトもいて、ミサトに背中から銃を突きつけられていた。
「ミサト…。」
「……。」
ミサトは何も言わない。いや、言葉が発せないのだ。
彼女の目にまともな光がない。恐らく強力な暗示がかけられているのだろう。
マヤ、日向、青葉は、青い顔をしていた。
作戦本部の床には、腕を縛り上げられて、床に転がされている、女性が一人。
「うぅ…。」
何度も殴られたのか口の端から血を流している。
「なんてことを……。それでも父親なの!?」
彼女は、ゲンドウに向かって叫んだ。
「親が子を使って何が悪い。」
「あんた…、最低!」
「司令! なぜこのようなことを! そうまでして初号機を覚醒させたというのですか!」
初号機の秘密を知る者の一人であるリツコは、叫んだ。
そうゲンドウの目的は、初号機の中に眠るユイの魂を覚醒させることである。その鍵として息子であるシンジが必要となり、誘拐したのだ。たまたま一緒にいた音無はついでである。シンジの言うことを聞かせる為に人質とされた。
「そうだ。」
リツコの問いに、ゲンドウはあっさりと返事を返した。
「あ…、あなたという人は…。」
リツコはワナワナと唇を震わせた。
「例え初号機を覚醒させたとしても、ゴジラを倒すなど無理です!」
「彼女は負けない。」
「何体の使徒がゴジラに無残に殺されたかあなたも見ているはずです!」
「赤木博士を黙らせろ。」
「はい…。」
「っミサ…!」
ゲンドウの言葉にミサトが反応し、リツコを後ろから関節技をかけて倒した。
リツコは関節技を決められた痛みに顔を歪めた。
「葛城…。」
物陰から加持が作戦本部の様子を見ていた。
ミサトの様子がおかしいとは思ったがまさか暗示がかけられていたとは。
あの従順ぶりからするにかなり深く長い間暗示がかけられていたのではないかと思われる。
そんなに長く暗示をかけるとしたら少なくとも自分がミサトと付き合っていた時期からとなるのだろうか。
「まさか……。」
犯人に心当たりがあった。
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