第十五話 体調管理は慎重に
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「! ツムグ!?」
ベッドの横にツムグが倒れているのに気づいた尾崎は身を乗り出した。
「…ヘーキ。まったくもう…、心配かけて。」
ツムグがへろへろ状態でベッドの端に手を掛けながら身を起こした。
「俺の身に何が?」
「ただの睡眠障害。」
「えっ?」
「ちょっと体調が悪くて眠れなくなってただけだよ。別に何か変なものに取りつかれたとかじゃない。睡眠不足なうえに自覚症状がなくって幻覚系の超能力が自分に向けて暴発したから悪夢を見てたんだ。」
「前の実験のせいか。」
幻覚系の超能力の特訓を兼ねた実験を数日前に行っていた。
「まあ、それもあるかもね。色々積み重なってこんなことになっちゃったわけだからそれが原因とは言い難いけど。例えるなら風邪をこじらせて肺炎になりかけたみたいな? 尾崎ちゃんの脳に溜まってった疲労をこっちに移したからしっかり寝れるはずだよ。ミュータント兵士の疲労が超能力の暴発に繋がるから疲労度の診察を義務付けるべきだね。」
「あの声も幻聴だったのか…。」
「……そうだろうね。尾崎ちゃんの超能力は強くてドツボにはまってたから俺じゃなかったら引っ張り戻せなかったぞ。体調が変だと思ったらすぐに言うこと。いい?」
「分かった…。次から気を付ける。」
ツムグの言葉に妙な含みがあるような気がしたが、気のせいだと思うことにした。
「すまんなツムグ、部下の体調管理を怠った俺の責任だ。」
「助けが必要ならいつでも呼んでくれていいよ。M機関のみんなのことは好きだし。遠慮はいらないから。」
ツムグはそう言って笑った。
「尾崎!」
「風間?」
そこへ病室のドアを乱暴に開けて風間が入ってきた。
風間はズカズカと尾崎のところに来ると、ベッドの上にいる尾崎を見おろし睨む。
「なんで病室にいやがるんだ?」
「えっと、これはその……。」
「体調不良だとさ。」
「はあ?」
熊坂の言葉に風間はわけが分からんと声を漏らした。
「ツムグ、大丈夫か?」
尾崎がぐったりしているツムグに声をかけた。
「なんとか…。」
「なんでてめーがいるんだ?」
「さっき、尾崎の体調不良の原因になってた脳の疲労感をこっちに移したとこ。」
「何してやがるんだ…。」
「詳しいことは熊坂に聞いて。俺…、帰る。」
「おお、休んどけ。すまんかったな。」
「いいよ、別に。じゃっ。」
ツムグは、ヒラヒラと手を振るとフラフラの足取りで病室から出ていった。
「大丈夫なのか?」
「ま、奴のことだから大丈夫だろう。まあ、とにかく休むことだ。いいな。」
「はい、分かりました。」
「残念だったな風間。せっかく尾崎との手合わせを楽しみにして戻ってきたってのに。
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