第十二話 使徒の誤算
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れていた。
簡素な病人服の恰好で、室内の外が見える窓にソッと手で触れる。
機龍フィアのリミッター解除装置を使うために出動したはいいが、目前のところで使徒に捕まった。
使徒は微生物の集まりだったことをあの時はまだ判明していなかった。少なくともこれまで現れた使徒と生態が全く異なるとは分かっていたがどのような生態を持つ使徒なのかは分からなかったし、何より機龍フィアを奪還することを優先しなければならず、機龍フィア自体がミュータントの強力な超能力をほとんど受けつけない仕組みだったのもあり仲間の力を合わせても接近できるのが尾崎しかいなかった。
アメーバのように変態した使徒に捕まり、その液体を口にしたうえに、精神攻撃まで受けたのだ。体の中に使徒が入り込んで生き延びている可能性は非常に高いということだ。
尾崎は、壁に背を預けてその場に座り込んだ。
清潔すぎる白い部屋はあまりいい気分にはならない。
正式にM機関への戦士になる前、尾崎には実験動物も同然の扱いを受けた時期がある。
初めのうちは他の者達と同等の扱いだったが、検査や訓練を受けるにつれ、自分だけが違う場所に移動する機会が増え、やがて引き離された。
尾崎でも、真一でもなく、割り振られた番号でもなく、“カイザー”という名称で呼ばれるようにもなり当時は混乱した。
普通の人間ではないという自覚はあり、同じ力を持つM機関に保護された仲間達との出会いを通じてそれを理解したし、その力の扱い方や高め方などを学ばなければならない理由だって理解した。
なのになぜ自分だけが違う場所に連れてこられたのか。子供に分かるわけがない。
あのままだったら尾崎真一という存在は実験体として終わっていたかもしれないし、尾崎自身が現在の尾崎として精神を保てていたか怪しい。
膝に顎を乗せてあの時のことを思い出す。
金色の混じった赤色と、なぜか奇妙に見えた笑みを思い出した。
そう、実験室に閉じ込められていた尾崎を解放したのは、ツムグだった。
しかし正確なところは解放したと言えるのかどうか今思うと微妙なところではある。
何をやったかというと…、ツムグが、襲って来たのである。
…殺すとかそういう意味の方である。
子供時代の尾崎は当時出せる全力で抵抗したので軽症ですんだ。普通ならトラウマになりそうだが、奇跡的にトラウマはならなかった。っというよりは、戦っている間に記憶が飛んでてしまったのでトラウマが残らなかったというのが正しいかもしれない。子供の身体で強大な超能力を多用して負担がかかりすぎたせいだとカルテには残っている。
能力の高いミュータントより、そんなミュータントを遊び半分に殺そうとしたG細胞完全適応者の方の対処の方が優先となり、尾崎は解放された
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