第十二話 使徒の誤算
[2/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
こ、ここは?」
起き上がり、周りを見回す。
倒壊した建物や車や家電、それ以外にも様々な物が転がっている。
座り込んでいる地面の感触も本物のようだ。
リアルだが、おかしい点がいくつかあった。周りに音がない。そして空気の動きない。匂いもない。つまり時が止まったように尾崎以外のすべてがおかしかったのだ。
とりあえず状況を整理しようと尾崎が思考しようとした時、強烈な血生臭い匂いと共に手に液体が触れる感触があった。
驚いてそちらを見ると、大きな瓦礫の下からドロドロと赤黒い液体が流れ出ていた。
瓦礫の下に生き物がいる。だが…、流れ出てくる血の量といい匂いといい、被災地の救助と捜索経験がある尾崎は、瓦礫の下には死体があると認識せざるおえなかった。
リアルな夢とはいえ、放っておくのは忍びないと感じた尾崎は立ち上がり、せめて瓦礫に潰されている状態から解放しようと思い、立ち上がって瓦礫に近づいた。
するとなぜかは分からないが、見えない力に吸い寄せられるように瓦礫の傍に落ちている衣類の切れ端のようなものや、文字盤の破片や、オモチャだったと思われるが原形がほとんど失われた物に目が行っていった。
丁度いいぐらいにそれぞれ一文字ずつぐらい字が残っていた。
それらの文字を組み合わせると、つ、ム、ぐ、となる。
尾崎は、あれ?っと思った。どこかで聞いたことがある話の内容と、今の状況が似ているというよく分からない確信みたいまものが脳裏に浮かんだからだ。
更に追い打ちをかけるように、ちょっとだけ離れたところに、『椎堂』と書かれた看板の一部みたいなものが落ちていた。形からするに『椎堂』は中間か後半部分の文字だったっぽい。
「なんでだ?」
なぜ自分が他人の過去の映像の幻の中にいるのか、そもそもこれが本当に“彼”……、椎堂ツムグの過去が再現された光景なのかどうかすら謎だ。
ツムグの名前の語源が、発見された場所に落ちていた物から適当につなぎ合わせてつけた仮の名前であることは聞いていた。名前の語源になった物の詳細は知らないが、ゴジラと怪獣の戦いが繰り広げられ破壊され尽くした現場にあった物だから形を保っている物はほとんどなかったはずだ。だから自分が目にしている文字が残っている壊れた物類が後のツムグの名前になった可能性が高い。
だとすると…。
「この下に、いるのは、…ツムグ? ツムグなのか?」
瓦礫の下から流れ出ている血は、乾く気配がない。それどころか、瓦礫の下の隙間からブクブクと血が泡立ち始めている。
破壊し尽くされた街の中で、誰にも知られることなく密かに胎動し、そしてG細胞完全適応者『椎堂ツムグ』と呼ばれることになる、あの神出鬼没のトラブルメーカーで、とりあえずは味方なんだがゴジラを崇拝して
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ