第八話 使徒も怯えるリリン(人間)!?
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っていた。
「なんて奴だ…。」
前線部隊と合流したゴードンがゴジラの回復力を見てそう呟いた。
確かにゴジラは、凄まじくタフで、不死と言っていいほどの回復力を持つが、怪我をしたり強力な相手と戦った後は、大抵一か月、長くて数年ぐらい寝て全快するという感じであった。
なので顔面にあれだけダメージを受けて、目の前で傷が癒えていく様は地球防衛軍の記録にない。セカンドインパクトを経て、どうやら熱線の威力の上昇だけじゃなく、回復力もパワーアップしたらしい。つくづくゴジラ細胞…略してG細胞というのは厄介であると改めて実感させられる。
「は…、はあ! はあ、はあはあはあ!」
機龍フィアのコックピットの中で、荒い呼吸を繰り返しながら口から唾液が混じった血をダラダラと垂らし続けるツムグ。足元は流れた血が広がり、ゴジラとの肉弾戦で機体が凄まじく揺れ動いたためコックピット全体に血が飛び散っていた。
ツムグは、止まらない血を見て感じた。どうやら体の中の沢山の血管が破けてしまったらしい。G細胞の修復ができていない。だが死ぬには至らない。出血に合わせて血液が生産されているのだ。
内臓からの出血なのだ、痛くないはずがないし、大量の血を喉から吐き出す苦しさは、常人でもミュータントでも耐えられるものじゃない。
だがG細胞が。椎堂ツムグというG細胞を取り込んだ椎堂ツムグを形作るすべての細胞が彼を死から遥か遠くに遠ざけている。どんな惨い実験でも気絶すらせず耐えたということは、意識を失っても仕方がない苦痛から逃げられないということだ。マイペースにのらりくらりと平気そうにしていたが、もしツムグにただの人間だった頃の記憶があったなら…、とっくに狂っていた。彼が取り込んでしまったG細胞は、狂うことすら許さない。本当なら死んでいたはずの彼が偶然G細胞に触れてしまい、死の淵から甦らされ、その過程でG細胞完全適応者に相応しい精神が再構築されたのではないかと、彼の細胞の研究を担当する研究者が口にしている。
だからツムグは、こう考える。
『俺(椎堂ツムグ)は、ゴジラさんの細胞と一つになったあの日生まれた。』
逆流してくる信号によるノイズのようなビジョンが脳内に映し出されるような錯覚の中、ツムグは、自分の出自について考えていた頃に出した自分なりの答えを思い出していた。
過去がない。自分がかつて何者だったかを解明する物も知人もおらず、その辺にあった物についていた言葉を繋ぎ合わせてつけられた『椎堂ツムグ』という名前。この名前が自分の呼び名だと認識した時が、空っぽだったツムグの頭の中の記憶の始まりだった。
「はあ、は…あ、…ゴ、ジラ…さん。ゴジラさん、ゴジラさんゴジラさん、ゴジラさんゴジラさんゴジラさんゴジラさんゴジラさんゴジラさんゴジラさ
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