第四話 海の逃亡戦!
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こ(食堂)でパートに入ってもらったわけ。」
「そうだったんですか…。でもシンジ君、体の方はもう大丈夫なのかい? 無理しちゃダメだよ。」
「もう大丈夫です。お、尾崎さんのおかげで…。」
精神崩壊状態からの回復と、目覚めてから錯乱した時に優しく宥めてもらったことを思い出したのか、シンジは、微かに頬を染めて尾崎に頭を下げた。
シンジは、はっきり言ってどちらかと言うと女顔な方であるため、14歳と若いのもあり、頬を染めて身を小さくするその仕草が女の子と錯覚しそうな可愛らしさがある。尾崎が恋人持ちだと知ってる大勢の人間がいるこの場所じゃなかったら確実に尾崎との間に何かあるという誤解が生まれて広まっていただろう。
残念というかなんというか…、尾崎もシンジもどっちもそういうことに鈍いため全然そんなことに気づいてはいない。
一方、風間は、シンジの治療の時に少しだけ死体みたいな状態だったシンジに精神感応を試みたっきりシンジを見ていなかったので、すっかり元気になったシンジをじーっと見ていた。
シンジが顔を上げた時、尾崎の隣にいる不機嫌な顔をした風間が目に入った途端、少し固まり、数秒置いて顔色を悪くして慌てておばちゃんの後ろに隠れてしまった。
そのシンジの反応に風間は片眉を吊り上げた。よく被災地の子供に避けられがちな風間は、子供に好かれにくいと自負していたが、シンジにそんな反応される心当たりがなかったので驚いた。
「…風間君、何かしたのかい?」
「何も…。」
後ろにシンジが引っ付いたおばちゃんが、風間に向って目を細めて聞くと、風間は首を横に振った。
尾崎は、顎に手を当てて、風間の横顔を見て少し考えた。
そしてシンジの反応の理由に気付き、手を叩いた。
「風間、ちょっと来い。」
尾崎は、風間の肩を掴んで調理場の方から離れた。
そして顔を近づけて、ヒソヒソと話した。
風間の機嫌悪そうな顔が、シンジの父親であるゲンドウの印象と重なってしまったんじゃないかということを。そしてシンジがゲンドウに何をされたのかを話した。
「シンジ君には悪気はないんだ。怒らないでやってくれ。」
「おまえは、俺がそんなことで怒ると思ってやがるのか?」
「あ、いや…別にそんなつもりじゃ…。」
「……悪かったな。」
「えっ?」
「おまえが子供一人を助けるのに死にかけたのを、まだ気にしてたってことだ。」
「風間…。」
風間は、退院してきた尾崎と会ってからずっと不機嫌だった理由を話すと、照れ隠しで尾崎から素早く離れて料理を受け取る窓口に向かってズカズカと歩いて行った。
尾崎は、風間の様子を見て、苦笑した。そして機嫌が悪い原因が分かってホッとした。結局自分に原因があったということだ。もっと言って
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