第三章
[8]前話
「お話したいですね」
「姫様と」
「はい、二人で」
こう言ってだ、実際に皇子はフラムに会うことを申し出た、それも彼女のことを事前に聞いてこう申し出たのだ。
「大尉としての私とですか」
「はい、殿下がです」
島国の宮内省の者が伝えた。
「お会いしたいとです」
「そうなのですね」
「是非軍務、剣のことを」
宮内省の者はさらに話した。
「お聞きしたいと言われています」
「それは何よりです」
フラムはその申し出に笑顔で応えた。
「それではです」
「殿下とお会いして下さいますか」
「はい」
満面の笑顔での返事だった。
「そうさせて頂きます」
「では明日です」
「午前にですね」
「殿下から来られますので」
「殿下からですか」
「それが何か」
「いえ、まさか殿下ご自身が来られるとは」
自国よりもずっと国力が上でしかも王室よりも格上の皇室の方がというのだ。
「思いませんので」
「我が国ではそれが普通ですか」
「普通ですか」
「こちらが申し出れば自分から赴くことは」
「普通ですか」
「礼儀です」
それだというのだ。
「我が国の。それでは」
「明日ですか」
「殿下とお話して下さい」
「わかりました」
フラムは敬礼で応えた、しかしだった。
敬礼をするその顔は興奮しきっていて顔も上気していた、そして宮内省の者が去った後でこの時も後ろにいた執事にも言われた。
「これで姫様も」
「大尉として会われるとのことですが」
フラムは執事に顔を向けて問い返した。
「殿下は」
「そうですね、しかし」
「それでもですか」
「爺は嬉ししゅうございます」
「言っている意味がわかりませんが」
「何時かおわかりになられます」
「そうでしょうか」
フラムは首を傾げさせた、だが三年後式の時にそのことがわかった。そうして東の島国まで供をしてくれて来た執事に笑顔でそのことを話したのだった。
思わぬ変化 完
2018・9・24
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