魔王領の日々
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、相手は、そんなことは気にも留めていないようだった。
もし、ネモから訓練を受けていなければ、最初の一撃の時点で、とっくに短剣を弾き飛ばされていたはずだったが、この時の私は、そんなことには気づかなかった。
「おらおら、どうした? 反撃してみろよ!」
身を守るので精一杯なのだ。
反撃する余裕などあるはずがない。
攻撃を受け止めるたびに、腕が痺れ、追い詰められていく。
もう何度、それを受け止めたかわからない。
最後の一撃を受けて、城壁に叩きつけられた私は、遂に短剣を落とし、その場に倒れこんだ。
「弱え、弱すぎんぞ!」
倒れたままでいると、今度は腹を蹴られた。
激しくむせ返ると、次は顔を踏んづけられた。
「立てよ! 寝るのは早えぞ! おい」
そんな風にされたら、立ちたくても立ち上がれない。
苦しむ私の顔を、彼は何度も踏みつけた。
殺すつもりはないのだろう。
この人は、ただ、私をいたぶって楽しんでいる。
私は、踏みつけられながら、兄の暴力に耐えていた日々を思い出してしまっていた。
あの暴力から逃れて1年以上が経っている。
無縁でいたかったあの場所に、結局戻ってきてしまった。
ここ魔王領にも、私の居場所なんてなかった。
どこにいてもこんな目に遭うのなら、どうせ逃れられないのなら、もういっそ、殺してほしいと、そう思った。
「何をしている!」
声のした方を見ると、ネモが立っていた。
男の方も、それに気づいて、そちらを振り向く。
「なんだよ、そんな睨むなよ、ネモ。ちょっと、新入りに、魔王軍の流儀を教えてやってただけだぜ、俺は」
言いながら、彼は、足を退けた。
「新人いびりが魔王軍の流儀か? 魔王様には、とても聞かせられないな、ルンフェス」
「裏切り者がどういう目に遭うか、教えてやってただけだろうが!」
ルンフェスと呼ばれた男は、平然と言い返した。
「ネモ、これでも、お前には同情してんだぜ? 自分の親の仇の娘を、面倒見ろなんてよ。魔王様も酷えよな」
親の仇? どういうことだろう?
ルンフェスは、今度は私に向き直って言った。
「知ってるか? お前の親父、スーディが裏切った時、ネモの親は魔王様の護衛隊長だったんだぜ? その時、スーディに殺されたんだよ」
気の毒になあ、と彼は続けた。
「しかも、あの時、魔王様が負傷したのは、こいつの親父が不甲斐なかったせいだ、とそんなことを言う心無い奴まで出てきてなあ。死屍に鞭打つって奴か?」
私は、少なからず、衝撃を受けていた。
ルンフェスが言ったことが事実なら、私はネモに恨まれても仕方ない。
ここでは、一番身近にいる相手からも疎まれている。
それでは、ここに私の居場所など、あるはずがない。
「ネモ、本当は、お前も、
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