魔王
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。今日は体を休めておけ」
「あ、あのっ……」
言うだけ言って、立ち去ろうとする彼を思わず呼び止めた。
「なんだ?」
「わ、私に……あの……」
私に才能なんてあるのかな? と聞こうとして、
「……なんでもない。ごめんなさい」
聞けなかった。
お前に才能などない、お前には何もない。
そう言われるのが怖くて。
自分に何もないことは、充分、自覚しているつもりだった。
だが、あらためて、他人の口からそう聞かされるのは、怖かった。
彼は、黙って踵を返し、立ち去った。
部屋の中は、ベッドと小さなテーブルがあるだけの飾り気のない所だった。
ベスフル城にいたころとはかなり扱いは違うが、それでも城内の一室があてがわれるということは、やはり、王族として、それなりに特別扱いされているような気もした。
ベッドに横になり、石の天井を見て考える。
私は、これからどうなるのか?
牢屋の中でも、同じような自問自答ばかりを繰り返していた気がする。
どうなるのか、ばかりで、どうするのか、と考えたことはない。
ただ、流されるまま生きてきた結果が、これだった。
不安は消えることはなかったが、長旅で疲れていたせいか、その日は、天井を見つめたまま、いつの間にか眠りに落ちていた。
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