魔王
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いているようだったが、何やら、丁重に扱われている雰囲気は伝わってきた。
やがて、馬車は山道に入る。
ここから先は、もう宿場町はないようで、毛布を渡され、馬車の中で眠った。
馬車には屋根もついていて、ふかふかのベッドほどとはいかなくとも、充分快適に眠ることができた。
そして、山脈を越えたところで、馬車から見える景色の向こうに、遂に、岩山に囲まれた巨大な城が姿を現した。
「あの場所が……魔王の……?」
「そうだ」
戦の知識など皆無に等しい私だったが、それが、遠めに見ても、とても堅牢で、攻められにくい作りだということは、なんとなく理解できた。
大勢の兵士を率いたまま、この山を越え、あの城を攻め落とすなど、その時は、とても現実的とは思えなかった。
兄は、本当にあそこまで攻め上るつもりなのだろうか?
山道は、ここからの下りも険しい。
到着には、もうしばらくかかりそうだった。
下りの道に入ると、あちこちに小さな家や集落なども見え始めた。
この辺りから、もう魔王領の中なのだろう。
周辺は、夜でもないのに、人影は殆どなく、静まり返っていた。
「この辺りは、土地が痩せていて作物があまり育たない」
外を眺めている私に、彼が説明してくれた。
「いずれは、この土地を捨てて、他へ移住しないと、この国に未来はない。魔王様はそうおっしゃっていた」
見える山々は、殆ど岩肌で、土が少なかった。
彼らはこんな土地で、ずっと暮らしてきたのか。
事情を知ると、彼らはただの恐ろしい侵略者ではなく、私達と変わらない人々なのだと思える。
父がそうだったのだから、当たり前のことだった。
大きな金属の門が、音を立てて開かれる。
門を抜けると、石造りの街があり、住民たちが行き交っていた
山の上から見えた巨大な城は、そのまま街も含んでいたのだ。
街を、丸ごと高い城壁が覆っている。
城塞都市と言うらしい。
大通りの先に、目的の城が見えた。
街の方は、山で見た集落ほどではないが、こちらもあまり活気がなかった。
そういえば、グレバスの城下町も似たようなものだったか。
城の前に着くと、馬車を下ろされ、彼の案内に従って、城の扉を潜った。
扉の左右に立つ衛兵は、ベスフル城の衛兵たちよりも一回り大きい。
街で見かけた人々も、皆、大柄だったことを考えると、生まれつき私達より大きな体を持っているのだろう。
父や、目の前を案内する彼は、魔王領の中では小柄な方にあたるようだった。
城の内装は、華やかだったベスフル城に比べると、どこか冷たく厳格な印象だった。
階段をいくつか上がり、扉を潜ると、ついに、謁見の間にたどり着いた。
そこは、ベスフル城のように絨毯などは引かれていない。
石の床の上
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