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戦国異伝供書
第十二話 苦闘の中でその三
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「妙ですな」
「どうしたのじゃ、猿」
「はい、本願寺の色は灰色ですな」
 どうしても悪を為してしまう民は何かということでだ、本願寺は民達と彼等を救おうと考えている自分達の色をこの色にしているのだ。灰色は白でも黒でもなくどうしても悪を為してしまう民に最も合う色と考えてだ。
「それがです」
「そういえば」
「はい、我等と戦う本願寺の門徒達は」
「灰色の服ではないな」
「どの色とも言えぬ妙な色で」
「闇の様なな」
「あの掛けている旗も」
 軍勢の旗ではない、敷きもの等を使った民百姓の旗の代わりと言っていいものだ。
「灰色ではありませぬ」
「あるにはあっても」
「多くではないですな」
「そうであるな」
「妙ではありますな」
「そういえば鉄砲がやけに多いのう」
 滝川はこのことを言った。
「雑賀衆程ではないが」
「あそこまで鉄砲が多いものか、一向一揆は」
 柴田も言われて述べた。
「それもな」
「まず、ですな」
「有り得ぬな」
 柴田はまた羽柴に応えた。
「言われてみれば」
「左様でありますな」
「何かな」
「おかしなことが多いですな」
「一向一揆にしてはな」
「灰色ではありませぬし」
「妙なことが多い」
「はい、しかもです」
 羽柴はさらに話した。
「普通の門徒達はあまり動いていませぬな」
「何か引っ掛かることばかりであるな」
「一向一揆にしては」
「確かに顕如殿は鐘を鳴らされた」
 法主である彼自らだ、石山の寺の鐘を鳴らしそれを織田家との戦の合図にしたのだ。
「そしてこの度の戦となったが」
「伊勢での諍いから」
「しかしな」
「それでもですな」
「灰色はないし鉄砲も多く」
「闇の如き色の旗が目立つ」
「おかしなことばかりじゃ」
「全く以て」
 羽柴の目にはいつもの剽軽さはない、深く考えているそれも怪しいものに対してのそれになっていた。
 そしてその目のままだ、彼は柴田達にこうも言った。
「若しや本願寺でない何者かがですぞ」
「当家との戦を行っている」
「そうやも知れぬか」
「そうも思いまするが」
 柴田と滝川にこう話した。
「当家を本願寺との戦に引き込み」
「ううむ、だとすると」
 佐々もその話を聞いて言った。
「それは何者じゃ」
「他の大名家とはです」
「考えられぬわ」
 佐々ははっきりと言い切った。
「それはな」
「それがしもです」
「我等は本願寺との戦で何十万もの門徒共と戦ってきてじゃ」
「倒してきましたな」
「何十万も出せるなぞじゃ」
 人、それをだ。
「そうおいそれとな」
「そうした大名家はありませぬな」
「武田も上杉も毛利も無理じゃ」
「北条もまた」
「その様な家は天下の何処にもない」
「当家でも二十万の兵で
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