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戦国異伝供書
第十二話 苦闘の中でその一

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               第十二話  苦闘の中で
 織田家は本願寺との戦に入った、すると信長はすぐに家臣達に兵を集めそうして領内を転戦していくことになった。
 伊勢から近江、越前、加賀そして紀伊も回ってだった。各国を転戦してそうして蜂起した門徒達を片っ端から倒していった。
 その中でだ、柴田は疲れきっている兵達を見て言った。
「辛いのはわかるが」
「それでもですな」
 その柴田に滝川が応えた。
「今は」
「うむ、織田家自体がじゃ」
「幾ら苦しむとも戦い」
「勝たねばならぬ」
「そうした戦ですな」
「ここで負けるとじゃ」
 本願寺、彼等にだ。
「そのままなし崩し的にじゃ」
「本願寺との戦全体に」
「当家は負けるぞ」
「だからですな」
「何としてもな」
「ここは疲れにも耐え」
「戦わねばならん」
「ようやく紀伊も平定しました」
 滝川はこのことも言った。
「伊勢の門徒達を抑え」
「近江もな」
 この時は森の奮戦と長政の活躍が大きかった。
「越前、加賀と抑え」
「そして紀伊もです」
「後はじゃ」
「摂津、河内、和泉の三国を」
「そこの門徒達を抑え」
「いよいよじゃ」
「摂津の、ですな」
 滝川はその目を強くさせて柴田に言った。
「石山にですな」
「兵を進めることになる、摂津を抑えれば」
 その時はというのだ。
「石山攻めでじゃ」
「石山さえ攻め落とせば」
「我等の勝ちじゃ」
 本願寺との戦においてはというのだ。
「そうなる」
「だからですな」
「あと一息じゃ」
 紀伊も抑えた今はというのだ。
「摂津、河内、和泉を抑えてな」
「石山攻めですな」
「あと少し力を振り絞ってな」
 そうしてというのだ。
「石山を攻めるのじゃ」
「そういうことですな」
「だから今はな」
「例え疲れていても」
「頑張ってもらわねばならん」 
 各国を駆け巡りそうして激しい戦を続けているがというのだ。
「何とかな」
「ですな、しかし戦に備えてです」
 ここでこうも言った滝川だった。
「道を整えて橋をかけておいたので」
「行軍は速く楽であったのう」
「実に。また兵糧も武具も豊富だったので」
「食うことには困らくな」
「安心して戦えました」
 武具も多く使えたというのだ。
「有り難いことに」
「それでかなり助かったな」
「拠点になる城も多かったので」
「まさに備えあればであるな」
「憂いなしですな」
「全くじゃ、それで紀伊での戦も終わったし」
「後は三国ですが」
 その摂津、河内、和泉だ。
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