運命の分かれ目
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私が、自分の運命の分かれ目に、"もしもあの時"と考えるなら、まずフェアルス姫達とのあの出会いが最初に浮かぶ。
もちろん、他にも、両親の死やスキルドとの出会いなど、大きな分かれ目は沢山存在している。
けれど、他のそれらは、何らかの偶然の重なりこそあれど、少なからず、人の意志が生み出したものであったと思う。
だが、あのお姫様達との出会いは、まったくの偶然であったはずだ。
街道を歩いていた私達と、砦に向かう彼女達に、接触の意志はない。
結果的に、あの出会いは、兄の復讐のきっかけとなった。
もし、あの出会いがなければ、兄はどうしていただろうか? 私はどうなっていただろうか?
それでも兄は、復讐に向けて、最終的には1人で行動を起こしたかもしれないが、私の運命は大きく変わってしまっただろうと思う。
あの出会いから、約2週間が経過。
私達は、ベスフル城にいた。
兄は、ベスフル城奪還の英雄として、入城したのである。
そう、"奪還"である。
ベスフル本城は、一度は、陥落していたのだ。
ベスフル城の陥落と、国王の処刑。その事実を私達が知ったのは、姫を護衛して、砦についた時だった。
泣き崩れる姫と、動揺する砦の兵士達。
兄は、それをまとめ上げ、ベスフル城に攻め上った。
砦の指揮官の中には、兄に不満を上げるものも少なくなかったが、そこで兄は、自身の身分、国王の甥であることを持ち出し、フェアルス姫の臣下となって、ベスフル城を奪還することを宣言したのだった。
そして、自ら先頭に立って戦い、敵に劣る戦力でベスフル城奪還を果たすことで、反対勢力を黙らせてしまったのである。
奇跡だと、ベスフルの人々は言った。
その時より、英雄ヴィレント、と兄は呼ばれるようになった。
入城した私達は、英雄の身内ということで、1人1人に城内の個室を与えられた。
それは、これまで、私が体験したことのないような待遇だった。
豪華な食事に、ふかふかのベッド、服もこれまでのボロボロだった物から、新品のドレスに変わった。
これでも王族が身に着けるには、質素なものだと、侍女さんが教えてくれた。
王族である。
国王の血縁である私は、王族として、スキルドやシルフィより、一段上の扱いを受けているようだ。
何もしなくても、侍女さんが、私の髪を整え、ドレスを着つけてくれる。
まるで、夢でも見ているようだった。
「チェント、いるか?」
部屋を訪ねてきたのは、スキルドだった。
入城してから3日、スキルドは、私を気遣って、毎日様子を見に来てくれていた。
私達は、部屋のベッドに並んで腰かけた。
「ここでの生活には慣れたか?」
スキルドの言葉に、私は首を横に振った。
「慣れるわけないよ。今までと全然違って、落
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