運命の分かれ目
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
その言葉が決め手となり、彼女は、兄にすべてを任せることを告げたのだった。
兄は、その時すでに、何の決断も下せない、姫の性格を見抜いていたようだった。
きっと今も彼女は、自分の責務から、逃げたがっているに違いない。
いっそ、兄が王位を継いでくれれば、とすら思っているかもしれない。
「兄さんは、戦いを続けるつもりなんだね」
両親の仇を討つため、フェアルス姫の権威を利用してでも、戦い続けるつもりなのだろう。
それから、スキルドは、私と他愛のない話を続けた後、部屋に戻っていった。
その翌日。
朝方、部屋の扉が叩かれたのを聴き、私はスキルドの来訪を予測して戸を開けると、そこには違う姿があった。
スキルドより、そして、兄よりも大きい身長に驚く。
その男は、ベスフル兵団の小隊長の1人、名前は確か、ガイといった。
筋骨隆々とした体つきに、強面で禿頭の男。目の前に黙って立たれただけで、恐ろしい容姿をしていた。
恐れ、戸惑う私に、彼が言った。
「ヴィレント殿の妹君、チェント殿ですな? 兄上がお呼びです。付いて来てください」
兄さんが、今更、私なんかに何の用だろう?
不思議に思ったが、そもそも、兄の考えていることなど、前からわからない。
それよりも、逆らえば、また兄に殴られるかも、という恐怖が、黙って私を従わせた。
歩いていくガイの後ろを、黙って付いていった。
歩幅が違うせいか、ゆっくり歩くと、置いて行かれそうになる。
兄の怒りを買いたくないがため、私は速足で追いかけた。
そういえば、彼は、砦のやり取りでも、兄に賛同していた数少ない人物であったことを思い出す。
「この臆病者共め! 国王陛下への恩義があるなら、今すぐ、ベスフル城奪還のために兵を挙げるべきであろう!」
そうやって、他の小隊長たちを怒鳴りつけたのを、覚えている。
この短い間に、使い走りを頼むほど、仲が良くなったのだろうか?
彼に限らず、城の兵たちの間では、兄を称賛、支持する声が、飛び交うようになっていた。
戦場などにまるで縁のなかった私には、兄の成しえたことの凄さは、いまいち実感できていない。
そんなことを考えながら歩いといると、気が付けば、城の外へ出ていた。
こんな場所で兄が待っているのだろうか?
私がきょとんとしていると、次の瞬間、私は口を塞がれ、喉元に短剣を押し付けられていた。
「!?」
私には、一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「声を出すな」
ガイの声。いつの間にか背中に回り込まれて、動きを封じられている。
「怪我をしたくなかったら、おとなしくしろ」
恐怖で体が動かなかった。
私は、布で口を塞がれ、縄で後ろ手をきつく縛られた。
小柄な私は、ガイの片手で軽々と担がれて、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ