運命の分かれ目
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ち着かない」
正直に、そう答える
スキルドは、そうか、と相槌を打った。
「この国も、王様が処刑されて、この先、どうなるかわからないし、こんな生活が、ずっと続けられる保証はないんだよな。
ヴィレントは、どうするつもりなんだろうか?」
もし、城が再び陥落し、敵に捕まれば、私も王族として処刑される可能性すらある。
そう思うと、逃げ出したい気持ちさえあった。
「兄さんは、どうしてるの?」
入城してから、私は兄とほとんど顔を合わせていなかった。
部屋の場所は聞いていたので、会おうと思えば簡単なはずだったが、兄の部屋を訪ねる理由が、私にはなかった。
「あいつは、ベスフル兵団の作戦会議に、毎日、顔を出しているみたいだけどな。昨日の夜会った時は、イラついてたな。この国の連中は腰抜けばかりだ、ってさ」
英雄となった兄は、すっかり、兵団を仕切っているようだった。
城内は、入城した初日こそ、浮かれた雰囲気があったが、翌日になると、また不穏な空気が漂い始めていた。
それも当たり前のことだった。
城は取り返したものの、それは戦いが振出しに戻っただけだからである。
一度の陥落によって、王様は殺され、その他にも、決して少なくない犠牲を出していた。
この国にとっては、まだマイナスの状態で、戦争は終わっていなかった。
「これ以上戦を続けても勝ち目はない、って思っている連中が多いらしい。なんたって、相手は魔王軍だしな」
戦の相手が魔王軍。
私がそれを知ったのは、ここベスフルに着いてからだったが、巷では、既に広まっていた情報らしい。
ベスフルの同盟国が、魔王軍に降伏、従属し、連合軍となって攻めてきたというのが、実情のようだった。
兄の方は、とっくにその事実を知っていたのだろう。
両親の仇討ちのために、戦いに参加したというのであれば、兄の行動も説明がついた。
「王様の正式な跡継ぎは、あのお姫様しかいない、って話だけど。あの様子じゃ、何の決断もできそうにないしな」
フェアルス姫は、16歳。この時の私と1つしか違わない。
今まで、箱入り娘同然に育てられてきたそうだ。
砦の中での様子を思い出す。
交戦か降伏が、指揮官たちに決断を迫られ、口ごもる彼女に、兄が言った。
「ここは、姫様に代わって、俺が戦いの指揮を執りましょう」
兄はそこで身分を明かし、自身には、その権利があると主張した。
指揮官たちは、何の証拠もないデタラメだと言った。
「この場ですぐに出せる証拠などないが……そうだな、姫様さえ認めてくださるのなら、他の方々に異論を挟む余地はないはずだろう?」
戸惑う彼女に、兄は畳みかけた。
「もし、姫様が認めてくださらないのなら仕方ない。ご自分で指揮を執るなり、降伏するなり、ご決断なさいませ」
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